279.「おとこっていう感じがなく空気のような存在」

  1. 朝飯前の朝飯

「おとこっていう感じがなく空気のような存在」

 三男の高校で、わたしはPTA広報部会に身をおくことになった。

 この高校のPTA広報部会は大人数でしかも行事によって学年ごとに班を編成して取り組むような形態だ。

 部員たちからは「毎週のように集まらなければいけないので大変だ」という声があがっている。

 あるとき部会長に声をかけた。

「もっとトップダウンでどんどん決めていったら会合も時間も省力化できますよ。コーディネーターを通すメリットはないと思います。しかるべき印刷会社とダイレクトにやりとりしたほうがスムーズですよ」

「これだけの部員が取り組むためにはいまの方法以外ない! コーディネートしてくれている荒田さんはPTAのOBで、この学校の野球部が甲子園に出場したときからずっとお願いしています」

「そのマージンがPTA会費にのしかかります。不要な慣例はどこかで断ち切る必要があると思います」

「PTA会費は潤沢にあるし、予算通りに執行しているので問題ないです」

 わたしは幼稚園、小学校、中学校のPTAでそれぞれ改革を断行してきたが、高校のPTAというのは前例踏襲型で岩盤のように厚いということを知った。

 部会長にもにらまれたようだ。

 それでも1年の班のメンバーには恵まれた。

 会合の終わりにはかならずといっていいほど「カフェ・ド・ココ」にはいって昼食をとりコーヒーをすすりながら広報部会の宿題をこなし、子どもたちの部活や勉強の近況を話し合った。

 わたしはこのなかで黒一点だ。

「ヤマチーは、おとこっていう感じがなく空気のような存在ね」

「えっ、息子の飯をつくっているから? 高校になって野球部の朝練があるので毎朝弁当づくりもしている。おんなになっておとこの魅力が失せたかな?」

「ちがう、ほめているのよ。おとこのひとで奥の席にでんっと座って仕切るひといるでしょ。ああいうのじゃないっていうこと」

「そうか、ありがとう」

 婚約者の笹原母からいつも「レディーファーストよ」と口を酸っぱく言われ、奥の席を譲って必要なことのみ語るようにしているからかもしれない。

 笹原母に感謝だ。

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