67.「警察官になってほしい!」

  1. 朝飯前の朝飯

「警察官になってほしい!」

 わが家にとって、動乱の平成21年の幕開けだ。

 1月8日に家族全員で大井町きゅりあん大ホールへ赴いた。

 黒船カンパニー代表取締役の中村文昭氏の講演を聴くためだ。

 中村氏はやんちゃだったが、高校卒業後東京へ家出し、野菜の行商を手伝いながら経営の勉強をし、地元へ戻って結婚式場等をオープンさせ、講演家としても成功している。

 講演内容の「人生の師匠をつくれ」「返事は0.2秒」「頼まれごとは、試されごと」等は人生を歩んでいくうえで非常にためになるので次男にぜひ聴かせたいと思った。

 だが、本人にはまだ心の準備ができていなかったようだ。

 1月18日には、妻と一緒に栃木県の高根沢町町民ホールで加藤秀視氏の話を聴いた。

 加藤氏は暴走族から裏社会へ足を踏み込みながら2度の逮捕で更生し、暴走族仲間と建設会社を起業、少年少女を立ち直らせるために奔走している人物だ。

 次男がまた北海道の高校も縁がなかった場合はお世話になろうと思って駆けつけた。

 その翌週、なんと千葉県警の現役警察官ふたりが自宅へやってきたのでなにごとかと思った。

「山ノ堀くんのおとうさんですか?」

「うちの次男がまたなにかやらかしましたか?」

「昨秋の夜中に中学校のプールへ集団で侵入したようなんです。防犯カメラへ映っていました。しかし次男さんだけがどうしてもその事実を認めませんでした。あんなに肚がすわったひとはなかなかいません」

「ご迷惑をおかけしています」

「じつは半分お願いもあってうかがいました。千葉県警の少年事件の検挙率が年々低下しています。次男さんのような少年犯罪を熟知するひとが警察官になって検挙率を上げてほしいという願いがあります」

「えっ、次男が警察官だなんて考えてもいませんでした」

「そんなことはないですよ」

「検挙率が低下しているのは警察の昇進試験と関係があるのではないですか? 日夜がんばって検挙率を上げるよりも、昇進試験に合格するほうが出世すると聞いています」

「よくご存じですね。息子さんに警察官になっていただくためには、高校だけは卒業していただく必要があります」

「本人に伝えておきます」

「お邪魔しました」

 家に戻った次男へ警察官とのやり取りを伝えると、「警官なんてやんないよ」と一蹴した。

 それにしても世の中からは不良とレッテルを貼られる次男が、社会を取り締まる側になってほしいと願う警察官がいるとは、本当に驚きだった。

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