109.「前のように元気な身体に戻りたい!!」

  1. 朝飯前の朝飯

「前のように元気な身体に戻りたい!!」

 妻はむかしからゴキブリが大の苦手でホウ酸団子をつくったり、でてきたらわたしに「退治して!」と言ったりしていたが、抗ガン剤治療後にはアリも意識するようになったと日記につづっている。

「小さいアリがムカつく。家の中へはいってくるな!! どうすればいいんだろう。よーく見ないとわからない。気持ち悪い。あー嫌だ。どうにかしてほしい」


 身長が163センチなので自分で蛍光灯を交換したり、簡単な日曜大工もこなしていた。それが……。
「インターネットで浄水器のカードリッジの注文をしたらとりつけにえらい時間がかかり、10時過ぎにようやく完了」


 がんの転移・再発でパート先の郵便局を退職して行きづらかったのだろう。
「午前中は洗濯して、13時30分から役場へ行き長女の住民票と印鑑証明を発行してもらい、簡易郵便局で3日までに着くようにミニミニ速達で送る。パート勤めしていた本局にはなんとなく行きづらい」

 テレビ好きなのは昔から変わらない。
「日中はとても暑い。半袖でもいいくらい。洗濯ものをたたみながらフジテレビ『ひとつ屋根の下』最終回と『ナースのお仕事』を見てしまう。『ひとつ屋根の下』は感動的だった。なぜ、このドラマを見なかったんだろう。江口洋介も福山雅治もまだとても若い。のりピーが出演していたドラマ、なぜか見ていないんだよね。結構話題になったのに。主題歌も財津和夫さんの『サボテンの花』なんだよな!!」


 妻は化学療法のせいか、ガンが体をむしばんでいるからか体力が急速に弱まっている。
「17時に三男が帰ってきたので、ケイヨーD2で目覚まし時計、ハンガー、ジャスコ(現・イオン)で惣菜を購入。自分で車を運転してでかけるとすごく疲れる。きょうも食事つくれなくて、ゴメン!!」

 翌日、わたしは妻と子どもたちを敵に回した。
「夫と三男が野球から帰ってくる。三男の勉強机を、新しい三男の部屋へ夫と長男で運ぶ。そのあと、夫が自分の判断でいらないもの(マンガやゲーム機、カード類)を全部部屋からだして満足気。三男は文句も何も言えず、ただ機嫌をそこねて半べそをかいている。それを見た長男は『子どもの気持ちも考えないで、意見も聞かないで勝手に強制的にいつもする。これまでもそうだった。もっと子どもの気持ちを考えてほしい』と訴えたが、夫は『綺麗にしたのになんの文句がある!!』と言って独善的。お互いの意見は平行線のまま。この前は『(三男に)ちゃんと食べた器を洗わせるように』と怒られるし。あ~、前のように元気な身体に戻りたい!!」

 わたしは厳父に「マンガを読むな! テレビの民放番組を見るな! 男が赤や黄色のシャツを着るな!」と育てられたやりかたをそのまま踏襲したので、妻子からは理解がえられなかった。

   それがトラウマやインナーチャイルドからきているのだということを知るのに、ずいぶんと時間を要してしまった。

(つづく)※リブログ、リツイート歓迎

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