飲酒による謹慎、遅刻のヤマで下宿移動!
4月に新学期を迎えクラス替えがあった。
三男は東京の中学校で2年A組、担任が学年主任の大山雅市教諭となる。
大山教諭はメガネが牛乳瓶の底のような厚さでかつての文学青年を彷彿とさせる。
本を読まない三男とはあわないかもしれない。
三男のことをいちばん買ってくれているのは、体育科の佐野漣教諭(サノセン)だ。
一方、次男は北海道の奥星余市高校2年B組になった。
担任が、やさしく包んでくれる玉浦淳子教諭(玉ちゃん)から原理原則を重視する家田堅太郎教諭(イエティー)にかわったことで、次男は不機嫌をあらわにしている。
「2年生に進級してどうだ?」
「玉ちゃんはよかった。イエティーはうるさいし、細かすぎて腹がたつ」
またしてもストライクゾーンがせまい次男だ。
「ふたりとも生徒思いでいい先生じゃないか! イエティーの一所懸命なところを評価したらどうか?」
「……(次男はじぶんにつごうのいいことしか答えない)」
6月初旬に家田教諭からわたしの携帯に連絡があった。
「おやじさん、息子がまたやってくれました。下宿の移動をしなければいけません。謹慎最終日にきてください」
「息子が今度はなにをしでかしましたか?」
「飲酒で謹慎にはいります。それと朝起きられなくて遅刻のヤマです。このままではとても3年に進級できません」
「下宿の移動とは?」
「永野下宿はゆるいからダメです。遅刻がない松乃下宿に移動させようと思います」
「松乃下宿はどうして遅刻がないのですか?」
「下宿に起こす当番がいて、それでも起きなかったらおかみさんが登場します。朝ごはんを食べさせて、2回にわけて車で送ってくれます」
「わかりました」
わたしは有給休暇を使い、北海道で次男と謹慎最終日に向きあった。
「この前、『もう謹慎は関係ないから安心しろ』と言わなかったか?」
「見つかったからしょうがない」
「見つかる見つからないじゃなく、未成年の飲酒は法律違反なんだから飲むな。それと遅刻が多くてこのままじゃ進級できないそうじゃないか? 家田先生から下宿移動の話があったぞ」
「えっ、やだよ」
「おれも永野下宿から卒業してくれるものと思っていた。でも、起きられないんじゃしょうがないだろう」
「起きるよ」
「ふざけるな! いままで起きられなかったやつがどう起きるんだ! 環境をかえるしかない! 家田先生に『息子が謹慎がなくなり始業時間までに登校して中抜けしなかったら永野下宿に戻してください』とお願いして了解をもらった」
「イエティーなんか信用できるか?」
「信用しろ! おまえの担任、北海道での親がわりは、家田先生と下宿の大家さんだけなんだから。信じることがすべてのスタートだ!」