276.テレパシーとシンクロニシティー

  1. 朝飯前の朝飯

テレパシーとシンクロニシティー

 交際中の笹原母はあたまが硬いわたしとは大きく異なる。

 西武新宿線下井草駅に19時に待ち合わせだ。

    わたしは急行を使い、彼女は各駅停車に乗ったのだろう。

 わたしが鷺ノ宮駅で各駅停車へ乗り換えると、左隣の席でノートパソコンのキーボードをパチパチたたいている女性がすぐに目にはいり声をあげた。

「えっ、きょうは早めに会社をでて、しかも鷺ノ宮駅で前方からまんなかへんへ移動したんだ! それなのにここで会うとはあまりに奇遇だ!」

「それってシンクロニシティーって言うの! なにも不思議なことではない」

 彼女は下を向いてパソコンをたたきながら話をつづける。

「あなたが初めて行くところだから、わたしが『この車両へ乗ってね』っていうテレパシーを送ったの! 次の駅で降りるから少し黙ってて。仕事中だから」

 この西武新宿線各駅停車は8両編成で4枚扉だから32分の1の確率だ。

 前後の電車を含めると約百分の1という計算になる。

 都内の講演会でも会場に向かってたまたま左手後方に座ったから彼女の目にはいった。

 それも彼女のテレパシーだろうか?

    あまりにあやしい。

 わたしは彼女のテレパシーとシンクロニシティーを想い、からだがぶるっと震えた。

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