228.「起きなきゃおばちゃんがチューするぞ!」

  1. 朝飯前の朝飯

「起きなきゃおばちゃんがチューするぞ!」

 わたしは北海道の奥星余市高校で下宿を移動させられた次男のことが気がかりでならなかった。

 ちゃんと起きて登校しているだろうか、学校や下宿でふてくされていないだろうか、新しい下宿に慣れただろうか、と。

 引っ越し前の永野下宿へ連絡するとつぎのように言われた。

「息子さんは引っ越し後も何日か、松乃下宿に直接帰らずに、うちの下宿をのぞきにくるんだわ。さみしそうな顔をして。よほど声をかけてやろうかと思ったけど、里ごころがついても新しい下宿にわるいでしょ。声をかけてやらなかったんだわ」

 引っ越し後の松乃下宿とは下記のやりとりだった。

「息子はどうですか?」

「あの子、いい子だね。挨拶もちゃんとできるし。きっと育ちがいいんだな」

「そんなこと言われるの、初めてです。ところで息子はちゃんと登校していますか?」

「うん、ちゃんと学校へ行っているよ。というか、行かせている」

「えっ、どんな方法で、ですか?」

「ほかの子よりも起きないからねー。そんなときは部屋へ入って『起きろ! 起きなきゃおばちゃんがチューするぞ!』って言うと、飛び起きて学校へ行くよ(笑い)」

「その調子、いやそのチュー子でお願いします(笑い)」

 次男に連絡すると、「松乃は飯も弁当もまずい。永野はよかった」の一点ばりだ。

 それにしてもちゃんと起きて登校するようになってよかった。

 担任の家田堅太郎教諭の英断と、松乃下宿のおばちゃんの「チューするぞ!」パワーのおかげだ。

 次男には「かわいそうだが、自分がまいたタネ、『因果応報』を自覚するしかない。あとは襟を正し、家田先生から早期の名誉回復をはかれ!」と言いたい。

 わたしは次男の学校生活の改善を願い、奥星余市高校PTA東日本支部広報委員長につき、『東日本だより』『三支部だより』の発行に傾注した。

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