「次男くんに、子どもできたの?」
朝、奥星余市高校PTAの木田母から電話がある。
「PTAの例会前に打ち合わせしませんか? 45期、高校1年生の母たちが大井町駅のカレー屋でランチするので品川駅で会いましょう」
わたしは中学1年生の三男を長女へ託し、12時前に品川駅へ着くと、すでに木田母が待ち合わせ場所の時計前で立っている。
駅ビルのつばめキッチンアトレ品川店へ入り、わたしが包みハンバーグ、木田母がシチューを注文すると、林田母の誘導尋問が始まる。
「副支部長を辞めるなんて尋常じゃないね。どうしたの?」
「理由は問わないでほしい」
「次男くんに、子どもできたの?」
「えっ、なんでわかるの?」
「なんとなくそんな気がした。彼らに会いに行かなくていいの? 相手の親御さんとだって会ったほうがいいんじゃないの?」
「勘弁してほしい」
「あなたはどうしたいの?」
「できたらおろしてほしい。はっきり言って子どもが子どもを育てるのなんてムリだよ」
「44期の白坂さんに男親の意見を聞いてみない?」
「あまり広げないでほしい。うわさが広がって高校を去ることになるかもしれないから」
そのうち木田母の携帯に44期の海東華子支部長からメールが入り別れる。
14時前、品川区中小企業センターへ木田母とは別々に着くと懐かしい顔があり、「ヤマチー、すごい久しぶり」とみんなに声をかけられる。
次男と下宿が同じ小山父と挨拶を交わしていると、白坂父が寄ってきて大阪弁で「山ノ堀さん、どや?」と。
そのうち木田母が「もう白ちゃんに話したの?」と割って入るので手を横にふった。
会議の冒頭、「北星祭」へ参加した感想を述べあう。
「年々、保護者の参加が減っているのが残念だが、内容は充実している」
「楽しかった」
「食べ物ばかりでなく別の企画もほしい」
わたしには「最近の様子を知らせてほしい」と言われたので、妻の逝去以降、三男のリトルリーグ世界大会出場や都内への転居について話す。
懇親会で木田母が白坂父を連れてやってくる。
「白ちゃんに話したら楽になるよ」
「いやー、とても言えない。人生最大のピンチだから」
「どないしたん?」
「言いたくない」
「他言せえへんから言うてえな」
わたしが根負けしてしゃべると、後日3人で北海道へ飛ぶことになった。