「人生でいちばん大事なのは家族!」
ニューヨークからバスを乗り継いでウイリアムズポートへ帰ってきてホテルのベッドへ横になる。
朝5時半に起床、会社のメールを確認・送信して、シャワーを浴びる。
ルームメートの川上父から川下り等の1日ツアーの模様を聞くと、「積極的に参加できませんでした。日本食の『一番』はおいしかったですよ」とのこと。
7時10分ホテルのレストランへ行く。
アメリカ人数名のみだったが、そのうち徳川監督夫人がきて3人で話をする。
夫人は選手たちの気持ちが切れていることを心配している。
川上父が部屋に帰ってのちも監督夫人と話す。
その後、監督夫人の携帯へ監督から電話があり、「9時から練習になった。川上父にも伝えて」と言われる。
9時すぎに第5練習場へ着くと、ジャパンはすでに練習を開始していて、父兄は球拾いを行なう。
きょうのジャパンのバッティングは湿り、あまり振れていないようだ。
いつもは1時間ほどの練習だが、きょうは2時間5分、11時10分までつづく。
日本リトルリーグ野球協会の志村会長と産経新聞委嘱記者のカルロス山垣昌史氏の野球観は真反対だ。
「ジャパンは例年セキュリティチェックの坂のところまで選手の声が聞こえるが、きょう(今年)は元気がない」
「声をだして練習するのは東洋ぐらいですよ。他の国は疲れるからやりません」
「この一戦がすべてだ」
「ロサンゼルス・ドジャースのトミー・ラソーダ監督がプレーオフで、もう一敗もできない状況で、『この試合も他の試合と変わらない。いつも通り戦う』と語りましたよ」
サムライ野球とベースボールの違いだろう。
選手たちを送り出したあと、リトルリーグ関連でにぎわうボールレストランへ向かう。
志村会長も一緒で、雨方ファミリーなど総勢十名。
ドリンクも料理も出てくるのが遅い。
監督夫人は一口ほど食べてティーバッティング場へ向かう。
この間、志村会長はイタリアの理事が入店するとすぐに声をかける。
「ヨーロッパ代表のジャーマニーがドイツ国歌でなく、星条旗を前にアメリカ国歌をうたうのはおかしいぞ」
イタリアの理事はニコッと笑い右手をあげて「Yah!」と言い去っていった。
わたしは志村会長に問うた。
「外国人には内角直球攻めするんですね?」
「彼らとはジョークと本音を織り交ぜながら話をしている。リトルリーグ野球協会(国際本部)ナンバー2の紳士に『お前さん、家族の試合で開会式にいなかったじゃないか?』と問うたら、『ミスター木村、人生でいちばん大事なのは家族で、2番目が自分の健康、3番目がリトルリーグだ。だからおれは家族を優先したまでだ』と言われた。彼らは建前で生きていない」
志村会長の高説を承ったあと、雨方コーチのホンダ左ハンドルのレンタカーでホテルへ帰った。