121.妻が腫瘍が脳転移して書いた「あいうえお」

  1. 朝飯前の朝飯

妻が腫瘍が脳転移して書いた「あいうえお」

 わたしは5時40分起床し、寝不足の目をこすりながらフォーラムの打ち合わせに出かける。

 フォーラムの共同主催者で、地元の不動産・建築会社を経営する大里綜合管理の野老真理子社長から提案があった。

「あなた毎日、会社と病院との往復でつかれていない?」

「大丈夫だよ。親が頑丈なからだに産んでくれたから」

「おくさんの調子はどう?」

「腫瘍が脳へ転移してから思考能力が減退して携帯電話のボタンがわからなくなったり、漢字を思いだせなくなったり、柱の角であたまを打ったりしているんだ」

「おくさんのために会社を休んで一緒の時間をすごしたり、おくさんとのなれそめやこれまで歩んできた軌跡を作文したらどう?」

「子どもたちの学費がかかるから稼がないといけないし、おれが休むと仕事がまわっていかないんだよ」

「会社をクビになったらうちにおいでよ」


「ありがとう。クビにはならないし、おれのような唐変木を操縦するのは、あなたでも難しいと思うよ」


 家には7時45分に着く。

 三男が野球に行かないでまだ家にいる。

   前日つれていくと言っていた長男に「行けないならおれが行くぞ?」と言うと、「大丈夫」と答えるので任せる。


 千葉大病院へ義父と義兄を連れて行く。

 妻は父親や兄が見舞いにきてうれしさを日記に書こうとするが、脳へ腫瘍が転移したあたまなので、ひらがな中心だ。

   しかも文章になっていない。

   わたしも義父も義兄も涙なしには読めなかった。


 おかや(※ま)
 あんちゃん
 23ど(※気温)
 おじいさん
 おばあさん
 やきゅう
 
 あいうえお
 かきくけこ
 さしすせそ
 たちつ●と
 なにぬねの
 はひふへほ
 まみむめ●

 (※や行以下なし)

(つづく)※リブログ、リツイート歓迎

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