86.「家族がいるからガンと闘える!」

  1. 朝飯前の朝飯

「家族がいるからガンと闘える!」

 朝6時20分起床し、前日に買ったパンとスープを朝食にする。

 三男がゆっくりしているので「野球に遅れるぞ。早く食べよ」とせかす。

 家を6時45分に出て、東金インターから千葉東金道路に乗り、三男を千葉市天台の駐車場で降ろして千葉大病院へ。

 10時すぎに大佐玲佳医師と須藤昭医師が入室したので、妻が「きょうは早いですね」と声をかけると、「きょうは土曜日ですから」の返事だ。

 大佐医師が背中へインターフェロンを注射し、腕に点滴のための管を挿し、吐き気留めの注射のあと、ダカルバジンを点滴。

 大網へ戻って郵便局で書留2件を受け取る。

 一件は伯父からの見舞いで、もう一件はトヨタカローラ千葉からの車検証だ。

「免疫ミルク」がガンに効くと聞いた。

 自宅のパソコンで「免疫ミルク」を検索すると北海道の業者と高知の業者がでてきた。

 書き込みが多い高知へ電話する。

「北海道とはどう違うのですか?」

「こちらはニュージーランドの乳牛の成分の高い初乳を絞って粉末にしています」

「あす届くように送ってくれませんか?」

「夕方になるかもしれません」

 その日は第25回のフォーラムで、講師の大畑誠也氏を熊本からお迎えした。

「『二十一世紀の人づくり~悪戦苦闘能力を身につけよう~』のテーマで二時間話したい。千葉は初めてで、ましてや九十九里海岸に行ったことがない」とおっしゃるので、まず白里海岸を案内して、会場の大網白里町保健文化センターへ。

 今回は県教委が高校の先生を十人ほど集めてくれ、町教委の鈴本将男さんの顔もある。

 大畑氏は熊本県下の6校の校長をつとめ、「大きな声で挨拶と返事」「大きな声で校歌斉唱」「1日1回図書館」などを掲げて、生徒のやる気を喚起し、中学3年生の受験者数倍増、資格取得や国公立大学合格者数当増大などそれぞれの課題をクリアしてきた。

 また大畑氏の話し方には迫力もあり、参加者一様に「素晴らしかった」と講演を絶賛。

 講演後、大畑氏と寿司「末広」で会食。

 大畑氏は「学生運動が盛んなころ、バリケード解除派としてストライキ派との論争に勝つために論理の勉強を行い、先輩から資格を取るように言われ教職課程を履修し、熊本大学近くの済々黌高校で教育実習を行い、生徒たちから『先生、絶対に教師になってください』と懇願され教職に就いた」と話して参加者の心をつかんだ。

「大畑先生の講演を途中まで聴いて、母親の病院からくら寿司へ寄って帰る」と言う長女に伝えた。

「教職課程を履修していてこんなにいい話を最後まで聴かないでパッと病院へ行くのは大いに疑問だ。見舞いは講演後でもあすでも行けるが、きょうの講演はきょうだけだ。ある偉人は『ひとーつ』と言った。人間はふたつを同時にやろうとしても中途半端に終わり身につかない。どちらかひとつに集中するべきの意。プライオリティーの問題だ」

 就職して実社会にでてみないと親の言うことは理解できないんだろうなと諦観する。

 妻は下記の日記をしたためていた。

「きのうTBSテレビ『金スマ 波乱万丈 歌手川村カオリ ~私が今伝えたいこと~』が放映された。乳ガンが再発・転移。自分の命がいつまで続くのか不安だと。抗ガン剤を投与しながら、ミュージシャンとして生計をたてている。最悪の体調であんなによくがんばれるなぁと思う。やはりかわいい娘がいるからだろう。

 わたしは幸せだと思う。こんなにみんなに見守られながら、ガンと闘うことができるのだから。克本晋一先生のように家族がいなければガンに立ち向かおうという気持ちになれないだろう。わたしの命もいつまでなのかわからない。まぁ健康なひとだって自分の寿命がわからないのだから。まだ、可能な限り生きなくてはいけない。父よりも長生きしないと親不孝になってしまう。

 次男が高校卒業するのをこの目で見たい。卒業式には行きたい! 長男が大学卒業して就職するまでは! 三男がプロ野球選手になるまでは! でも、自分が思うような人生を歩めばいいんだからね! 長女が結婚して孫を連れてくるまでは!」

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