130.「わたしは(※緩和科へ)てんかする」

  1. 朝飯前の朝飯

「わたしは(※緩和科へ)てんかする」

「いま何時?」

 妻の声で目が覚める。

「4時40分だよ。水飲む?」

「いらない」

「まだ早いよ! また寝よう!」

 いちど横になって寝るが、5時40分に妻の声で再び起こされる。

「そろそろ点滴だね」

「きょうは何日?」

「(6月)3日」

「何曜日?」

「水曜日」

「完璧じゃないか?」


 ガンマナイフ(放射線治療装置)の治療によって減退していた思考能力がよみがえっている。

 その治療日は6月1日、月曜だった。

 これまでをリセットして再スタートを切るにふさわしい日で、その2日後だとわかっただけでも大きな前進だ。


 わたしは7時すぎにシャワーを浴び、スーツに着替えて、7時25分にNHK・BS1の朝ドラ「つばさ」にチャンネルを合わせてやり、1階のampmへ弁当を買いに行く。


 待合室でスープに給湯して部屋に戻ると、妻は朝ドラを見ている。

 その後、滝田八重医師の回診につづいて、水曜日なので松島弘之教授を中心に10人近くの医師が入室して声をかかられる。


「調子は?」

「きょう転科ですね」

「上(の階の緩和科)にもたまには見に行きますから」

 医師の回診後、妻に「お先にな」と言って弁当に箸をつける。

 会社へ11時に着くと新規の電話が入り、重要な仕事が後回しになる。

 17時45分に仕事を終えると、次男から「羽田空港へ着いた。18時5分発のバスに乗って病院へ行く」との連絡が入る。


 わたしは神楽坂の美容室「アジト」で「30分でたのみます」とお願いすると、武井征広美容師がその通りに仕上げてくれる。

 千葉大病院へ向かう途中、総武線内で携帯電話の充電が切れたので、千葉三越そばのauショップへ行き、ポイントで充電器を購入。


 病院へ着くと、妻は緩和科の新しい病室にポツンといてとてもさみしそうだった。


 その日の妻は13年前の田川一真医師の時代からお世話になり慣れ親しんでいる皮膚科から緩和科へ転科したことが相当ショックだったのか、日記から喜びが消えている。

(※次男)ちばへかえる
 わたしは(※緩和科へ)てんか
 落ち込まない
 前向きになんとか生きよう
(※体温)36.7℃

 緩和科とは終末期医療、ターミナルケアのことだ。

(つづく)※リブログ、リツイート歓迎

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