「点滴液が血管を通るととても痛い!」
翌月の話だが、次男の高校と三男の中学の入学式がともに4月8日となったので、わたしはどちらかをパスするしかない。
妹から「4月5日~7日くらいに休暇を取って手伝いに行こうか?」とメールがきた。
妻にそのこととと「(次男の)北海道の入学式には、親父か長男に行ってもらおうと思う」とメールすると、「北海道にはあなたが行って!」との返信がある。
三男の中学の入学式には、自らの体調を壊してでも参加しようと思っているのかもしれない。
そのために障害かもしれないわたしを北海道へ向かわせたいのだろう。
夕方、わたしは妻に電話した。
「次男の最初の高校には一緒に行った。今度は2度目だからおれじゃなくてもいいだろう」
「今度こそ卒業させたい。だからあなたじゃなきゃダメ」
「そうか? だったら妹がきてくれる日程を調整しよう」
「義妹さんの日程は任せる。よろしく言っておいて。きょう長女と長男が見舞いにきてくれた。次男と三男は自宅で留守番をしている」
夜、自宅へ電話しても誰も出ない。次男の携帯へ連絡すると、「(三男は)板間で寝ているよ」と言うので「起こして風呂へ入れて寝かせてくれ」と頼む。
仕事が忙しくすべて遅れ気味のような気がしてなにから着手すべきか考える。
妻の病院を見舞うためには、早起きして早朝出勤で効率よく仕事をしていくしかないだろうと思う。
錦糸町駅ホームで立ち食い蕎麦をと思っていたが、君津駅行き快速電車20時32分発がきたので乗車する。
千葉駅で21時を回っているので妻を見舞えない。
仕方なく蘇我駅で降り、上総一ノ宮駅行き快速電車に乗り換える。
帰宅すると、次男と三男がいる。
次男は洗濯物を干してくれているので声をかける。
「ごくろうさん。長女と長男に洗濯物を干すように言ったのだが」
「ねえちゃんは茶碗を洗ってくれた。あれから洗い物が増えているけど」
「バイクが二台あるのはどうしてか?」
次男が曖昧な返事をしたのが気になり夜中に部屋を覗くともぬけの殻だ。
都合が悪くなったり頭にきたら逃げる癖はいまも昔も変わらない。
妻は入院2日目に抗ガン剤治療を行ない下記のようにまとめている。
「水―吐き気止め―ダカルバジン―生食塩液、インターフェロンを背中3か所へ点滴すると、手が少してんてんと赤くなる。陽射しには絶対に気をつけないといけない。ブラインドはおろしたままで陽にあたらないようにする。点滴液が血管を通ると、とても痛いときがある。夜間は楽というが体が夜働くサイクルになっていないので大変だ。長女がバスで千葉駅まで行き、きょうは東京でひとり暮らしを始めた友人家に泊まると言っている。また夫が怒るだろう……。夫から電話があり、やはり長女のことを言う。大阪の会社へ就職するので友だちに会っておきたいという気持ちはわたしにはよくわかるが、夫には理解不能らしい」
妻のつらく苦しい抗ガン剤治療が始まったが、わたしは仕事が忙しく顔を出してやることができなかった。