257.妻亡きあとの初デート

  1. 朝飯前の朝飯

妻亡きあとの初デート

「夫人が鬱病、息子が自閉症でも、自分は会社の同期でトップをつづけ社長の座をつかんだ」と述べている取引先の会社の社長の秘書と電話で話をする機会があった。

「わたしは妻の死や子育て等で降格しました。御社の社長のバイタリティーには敬服します」

「おくさんの病名は?」

「悪性黒色腫の再発・転移です」

「そうですか? わたしの主人は職場で蜘蛛膜下出血で逝きたした」

 この秘書女性は文京区在住でわたしが北区だったので、「今度、東京メトロ南北線沿線で食事でもしましょう」ということになった。

 文京区本郷のロシア料理「海燕」で初めて顔あわせすると、「宅(夫)はこの近くの大学でした」とのこと、東京大学に違いない。

 なんとこの女性も四人の子持ちで、わが家の三男と同い年らしい。

 その場で携帯のメールを交換すると、早速連絡がきた。

「中学3年生のお子さんはどこの高校を受験されるのですか?」

「いまのところ野球で、ある大学の附属高校に行くと言っています」

「慶應ですか? それとも早稲田? 明治か青学かな?」

「そんないいところではありません」

 この女性とは比較的フランクに話ができたが、「宅は東大でした」「慶應か早稲田か明治か青学か?」のことばに気後れして、わたしが連絡をとるのを控えると途絶えた。

 それでも妻亡きあと結婚応報サービスへ入会してもダメだったデートができたことは、“不幸”のオリンピック日本代表選手にちょっぴり勇気を与え、好転を予想させるできごとだった。

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