218.「おとうさん、おれ子どもできたわ」

  1. 朝飯前の朝飯

「おとうさん、おれ子どもできたわ」

 千葉での会社関係のイベントに参加し帰宅したあと、高校1年生の次男から携帯に電話がかかってくる。

「おとうさん、おれ子どもできたわ」

「えっ、相手は?」

「1コ上のタメ(同い年)だよ」

「付き合っているのか?」

「ああ」

「いま何か月だ?」

「5月の最初ころだから4か月(5か月目)」

「で、どうしようと思っているんだ?」

「彼女は『産みたい』と言っている。おれも彼女が言うようにしようと思っている」

「せっかく入った高校を退学して働くのか? 高卒資格がないとバイトもできないと言って北海道まで行って卒業資格をめざしていたんじゃないのか?」

「仕方ねえ」

「えっ、おかあさんは、おまえの高校卒業を楽しみにして逝った。それを忘れたのか?」

「……(黙ったまま答えない)」

「何か変わったことがあれば電話してこい。こっちからも連絡する」

 こういうとき妻ならどうするだろう?

 この1か月、アメリカからの帰国、会社へ出勤しながら、中学校での面談、長男の家裁出頭への同行(2度目)、東京の不動産選び、引っ越し、三男のリトル映画撮影とシニア選びに加え、次男の不祥事だ。

 電話を切ったあと、わたしはからだから力が抜け、膝が折れ、バンと倒れる。

 数十分後にわれに返り、奥星余市高校PTAの木田副支部長へ「一身上の理由によりPTA副支部長を辞任します」とメールする。

 焦点の5月初旬と言えば次男が「GWに千葉へ帰りたい」と言ってきて、わたしが熟考のすえ「ダメだ」と答えた時期と重なる。

 中2のときも「携帯電話がほしい」と言って拒否すると、不良の道へ一直線だった。

 反対すると、結果的にいつも親へメガトン級の報復がある。

 わたしはこれまで長男や次男が不良をしても、妻が悪性黒色腫の転移・再発で逝っても、会社で上司のパワハラがあっても、家族(三男の子育て)のために、平櫛田中「わしがやらねばだれがやる」、山中鹿之助「我に七難八苦を与え給え」の気概で取り組んできた。

 しかし今回ばかりは情けなくて、泣けてきて、腰も砕けて、すべての気力が消えうせた。

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