209.「『今回の転校は大英断』と教師仲間で語っています」

  1. 朝飯前の朝飯

「『今回の転校は大英断』と教師仲間で語っています」

 長男の同行で家裁支部へ行ったあと、大網駅で特急わかしおに飛び乗り、会社へ15時着。

 岩野清志専務(当時)がいたら「きょうはサービス出勤ですから」と言うつもりでいたが、関連会社へ出かけているようで胸をなでおろす。

 17時半の終礼後、川野母、長男、不動産会社の内藤賢一氏へ電話する。

 三男の中学校から着信履歴があり19時すぎに電話すると、「1年C組の荻原智恵子先生はいましがた帰られました」と言われる。

 電話をかけてもらうように伝言したがかかってこないので、失礼ながら自宅へ連絡し用件を聞く。

「転校の手続きは①本校から在学証明書と教科書証明書を発行、②大網白里町役場(現・大網白里市役所)へ転出届を提出、東京北区へ転入通知を行う、④本校の在学証明書と教科書証明書を北区立中学校へ渡す――の順になります。笠松稔校長の配慮で15日に転居通知をだしたあとも、登校を許可します。北区立中へ初めて登校するのは連休明けの9月24日です」

「笠松校長へよろしくお伝えください。この期におよんでなんですが、先生から見て息子の、本当のところどう思われますか?」

「同級生のあいだだけでなく学校全体でも存在感が大きいです。みんなが一目も二目もおいています。教師の顔つきを見て、『先生が怒っているからちゃんとしよう!』と言ったり、機を見るに敏でいろいろ気遣いをしてくれます。トラブルとかなにもなければとても頼もしい存在です」

 長男、次男に比べて従順でもの静か、めったに反発しない三男の、家庭と違う一面があることを知る。

「『存在感が大きい。一目も二目も置く』とはどんなことですか?」

「鎌倉へのバス旅行のときも、息子さんのひとことで流れが変わりました。体育祭の前々日に卒業生が学校へやってきて、息子さんに『バイクの部品をくれ。おにいさんとは話がついているから』と話していました。その光景を見ただけでも、同級生は特別な存在で『怖い』と思ってしまいます。『おにいさんの交遊との関係をちゃんと断ち切らないといけない、という点で、今回の転校は英断だ』と教師仲間で語っています」

 三男が幼稚園時代に「あたまに障碍がある子に押されたりつねられても笑ってじっと我慢していて、かれはえらいです!」と言われたころが懐かしく思える。

 残業し終電で帰宅すると、電灯が煌々とつき、部屋が少しだけ片づいている。

 半端なくなまいきだが、やさしい一面もある長男がかたづけてくれたのかもしれない。

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