201.「おとうさん、ゼッケン縫うの、前後逆だよ!」

  1. 朝飯前の朝飯

「おとうさん、ゼッケン縫うの、前後逆だよ!」

 アメリカから帰国して出勤2日目、残業で22時帰宅となる。

 三男はきょうも死んだようにベッドで寝ている。


 野球選手なので食べさせないと大きくならないだろうと思い、可哀想だが起こして尋ねる。

「食べたか?」

「まーだ」

「これを食べよ」

「……(寝ぼけているのか答えない)」

「報告はなにかないか?」

「おとうさん、体操服を洗濯して、ゼッケンつけて」

 わたしは自宅で洗濯後、コインランドリーで乾燥機にかけて持ち帰り、ゼッケンを丁寧に半返し縫いする。

 生来、几帳面(?)な性格なのと、亡き妻なら寝る間も惜しんでとりくむだろうと思い、同様にうちこむ。

 終了後、時計を見ると2時半すぎで、その他の洗濯物を干し終わると時計が3時をさしている。

 この時間、アメリカだとアフタヌーンで、疲れているのに目がさえてきて皮肉だ。

 5時半、あたまが痛いがむりやり起床し朝食の準備をしていると、三男が6時に起きて声をかける。

「おとうさん、体操服を洗ってゼッケンつけてくれた?」

「ああ、バッチリだろう!」

「えっ、おとうさん、ゼッケン縫うの、前後逆だよ!」

「うそー、野球と一緒で背番号じゃないのか?」

「前だよ! もういい4点でいいから早く直して!」

「わかった」

 三男は朝食をかけこみ、体操服の簡易4点縫いで中学校の体育祭予行演習へ出かけて行く。

 自分の思い込みのせいとはいえ、半返し縫いに費やした時間を返してほしいと、くやし涙をながしながら、会社で時差ぼけ、睡眠不足と闘いながら仕事をやり終えた。

アメーバブログヘ

関連記事

朝食前の朝食_アイキャッチ

257.妻亡きあとの初デート

妻亡きあとの初デート「夫人が鬱病、息子が自閉症でも、自分は会社の同期でトップをつづけ社長の座をつかんだ」と述べている取引先の会社の社長の秘書と電話で話をする機会…

朝食前の朝食_アイキャッチ

80.長女をニートにさせたくない!

長女をニートにさせたくない! 東京駅で妻を見送ってから会社へ13時半に戻り、昼休みの超過時間をカバーしようと思い、休憩なしで顧客からの依頼を一つひとつ丁寧に対応…

朝食前の朝食_アイキャッチ

271.小中学生自身の弁当づくり

小中学生自身の弁当づくり 大里綜合管理での第57回フォーラムは竹下和男氏(子どもが作る“弁当の日”提唱者)による「命輝く“弁当の日”で 人が輝く! 地域が変わる…