「おたくの息子をなぐってやろうかと思った!」
8時半、喜多グラウンドへ集合し、グラウンド内の芝刈りのあと、新しくティーボール(野球やソフトボールににているが、ピッチャーのいない屋外球技)の野球場を造営するために歯が大きい芝刈り機で何度も草刈りを行なう。
JTBの大川充三氏が着いて集合がかかると、十四選手と親が勢ぞろいする。
まず徳川洋文監督の指示のもと、世界大会出場の提出書類を書いて、戸籍謄本や公共料金の領収書、運転免許証のコピーを渡す。
大川氏は1枚のシート「千葉リトルリーグ 世界選手権大会応援ツアー」の概要を説明する。
「選手が8月17日~9月1日に対して、父兄が全日程8月19日~9月1日、前半8月19日~8月26日、後半8月24日~9月1日の3コースあります。全・後半の現地最終日は選手がウイリアムズポートから飛行機の乗り継ぎ、父兄はケネディ空港かニューアーク空港までバスで5時間かけて移動。後半は人数にもよりますが、添乗員なしになるかもしれません。ホテルはモーテルと呼ばれていてふたり1室だが、キングサイズなので1ベッドにふたり寝られます。ホテルから球場までは徒歩5分です。選手たちは選手村での寝泊まりとなります」
親から代金等について質問があり、大川氏が次のように答えた。
「パスポートがなければ取得してください。JTB応援ツアーの代金は、①予選~決勝まで@50万円、②予選のみ@30万円、③決勝トーナメントのみ@30万円(すべて旅費、宿泊費、朝食込み)――です。選手間の交換用記念品は、安くてかさばらないものが必要です。選手の健康管理には留意するようにしてください」
親に希望を尋ねると、全日程に父親ふたり、前半日程に10人、後半日程にふたりの手があがる。
概要をつかみ、締め切りが近いので、子どもたちをどうするかについて早く結論をださないといけないと思う。
アメリカ応援ツアーの説明後、再び1時間ほど草刈りに精だすと、「バーベキューだよ」の声。
監督はバドワイザー、重田父はキリン一番搾り、わたしは運転手なのでサイダーで杯をあげる。
しばらくして警視庁刑事で近所の川野父がわたしに声をかけてくる。
「おたくの息子(三男)が不良と付き合っているぞ。この前は公園でつるんでいた。最近は場所をかえているみたいだ。なぐってやろうかと思った!」
「そうですか? 見つけたらその場でなぐってやってください!」
夕方auショップへ亡き妻の携帯電話を解約しに行く。
妻の携帯を確認すると、死亡の1週間以降の電話着信ゼロ、メール1件のみ。
川野父の「息子が不良と付き合っている! なぐってやろうかと思った!」のことばは青天の霹靂だ。
このうえ、ノーマークの三男までもが次男のように不良と呼ばれるようになったらどうすりゃいいんだ、わが家に再び暗雲がたちこめているように感じられた。