妻の「飲めない!」がくやしい
病室のブラインドを降ろしていてしかも雨降りなので目覚めが7時と遅くなる。
わたしは妻に声をかけた。
「トイレ、大丈夫?」
「きてたの? まだいい」
「富士山の水と薬を飲みなよ」
「飲めない!」
「前にも言ったが、従姉の次男さんが肺の難病で苦しんでいたのがこれを飲んで元気になった!」
「あとで飲む」
自分だったらどんなにつらくても「効果があった」と勧められたものであればすぐに飲むのにと思うとくやしい。
わたしは7時半にシャワーを浴び、コンビニで焼きそばとパンを購入し、8時から妻より先に食事をとる。
それからすぐに妻のお茶と食事が届いた。
「冷蔵庫から梅干しと塩昆布をだして!」
「わかった」
しばらくすると水と薬を30分おきに飲んでくれたので安心し、妻の肩をそっとたたく。
「よし、いいぞ!」
その後、小方渉医師単独、松島弘之教授中心の回診が2度ある。
小方医師からは「いま服用いている薬は循環器病センターに情報提供しています。連携は大丈夫ですから」と言われる。
長女に「あとをたのむ」とメールして千葉大病院をでて会社へ11時半につく。
この日はまず講師派遣の仕事に漏れがないかチェックし、顧客や講師からの要望事項に対応する。
こんな忙しいときに限って「オンデマンド印刷(版の制作が不要なデジタル印刷機を使用)で6月1日までに数日で仕上げてほしい」といった超タイトな仕事も入る。
文字原稿を完成させ、竹中俊男デザイナーに地図のAdobe社「Illustrator」での内製、平岡寛和次長へ印刷会社と顧客との仲介をたのみ、有給休暇を数日とれる体制にする。
会社に鍵をかけ退出したのは23時10分。
錦糸町駅23時40分発快速千葉行きへ乗る。
千葉駅からはタクシーで千葉大病院へ24時20分着。
深夜の病院というのは迷路のように廊下がつづき、暗くしーんと静まりかえっていて、なにが飛びだしてくるかわからないといった怖ろしさもある。
妻はもちろん寝ているので、病室では抜き足、差し足、忍び足だ。
スーツ上下をハンガーにかけ、着替えをしないで下着のまま簡易ベッドにもぐりこみからだをしずめた。
あすはいよいよガンマナイフ(放射線照射装置)で循環器病センターへ入院だ。
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