216.「友だち、7人できたよ」

  1. 朝飯前の朝飯

「友だち、7人できたよ」

 三男が東京の中学校への転校初日だ。

 もし「この中学校はイヤだ」と言えば東京の家の住宅ローンを払いながら、また千葉へ引き返さなければいけない。

    わたしは不安な気持ちで帰宅する。

 隣家のおばあさんに「おいしい」と紹介された亜光飯店に三男を誘い、おそるおそる質問した。

「今度はなに組か?」

「B組だよ」

「クラス担任は?」

「二浦志保っていう女の先生だよ」

「ところで新しい中学校はどうだ?」

「楽しいよ」

「新しい友だちできたか?」

「友だち7人できたよ。ぼくのお尻を見て『おまえ野球やってるだろう』って言うので、『そうだよ』って答えた。そしたら『千葉だと、ブクロ知らないだろう!』『池袋のことでしょ』『行ったことないよな? 連れてってやろう!』となって、放課後に軟式や硬式の野球部7人とチャリでブクロへ行ってきたんだ。みんないいやつばっかだよ」

「ほ、ほんとか? ではここで大丈夫だな!」

「大丈夫だよ!」

「それはよかった!」

 わたしは胸をフーッとなでおろした。

 次男は奥星余市高校へ入学後、「愛国千葉」「帰りてえ」と机に鉛筆で落書きしてストライクゾーンの狭さを訴えたが、三男は環境適応力が高くストライクゾーンも広いのだろう。


 帰宅後、千葉から東京へ引っ越しの最中に「お仏壇のはせがわ」に寄って購入した、妻の仏壇の鈴をチンと鳴らし、香を焚き、手を合わせ、心のなかで話しかけた。

「おれや次男は『おまえ、ブクロ知らないだろう』と言われたら『知らない! それがどうした!』とムキになるかもしれないが、三男はきみに似て『(行ったことないけど)池袋のことでしょ』ってフレンドリーに答えるから相手もやさしい気持ちで『(行ったことないなら)連れてってやろう』って言うんだな。また千葉へ戻る愚とならなくて本当によかったよ」

 仏壇へ日本酒1合を置き、それを今度は自分に引き寄せ、ゴクッと飲み干し、「やったー」と快哉を叫んだ。

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