「アメリカでも天女になって舞いおりてくれ!」
オープニングセレモニー以降、雨が激しくなり、テント内で休息する。
長女は若田令嬢たちとトランプの大富豪に興じ、次男は「腹が減った」と言う。
「13時からの練習は中止で解散」と聞き、食事にくりだそうという話も立ち消えとなり、サンドイッチやホットドッグのサブウェイのバーガーをかじる。
ホテルの部屋へもどると晴れてきたので、再びグラウンドへ戻る。
ボランティアスタジアムでミッドアトランティック(MA)対ニューイングランド(NE)の試合が開始となる。
両軍の脚が対照的だ。
ソックスを上まであげているMAに対し、ユニフォームのパンツでかくして見えないNE。
脚をからませ小気味よい試合運びのMAに比べて、少々緩慢なNE。
試合結果も大差がつく。
観客席に長男がいたのでふたりで観戦する。
雨方母から「ジャパンの選手たちと一緒におとうさんも台湾対ヨーロッパを1塁側で観戦していますよ」との電話をもらいラマダスタジアムへ移動。
Tシャツに短パン、サンダル姿の三男のなつかしい顔がある。
エースの若田くんに「調子はどう?」と尋ねると、「大丈夫になりました」との返事。
飛行機から降りてようやく体調が戻ったようだ。
三男はデジカメに世界のリトルリーガーたちを撮影している。
夜、親たちは監督夫人の部屋へ集合する。
監督も選手村から見えていて、あすのサウジアラビア戦の抱負を聞く。
ジャパンの先発投手の名は明かさないが、主戦若田を確信する。
相手がどのチームであれ、「初戦を大切に!」の意思が伝わる。
ジャパンの練習時間とベネズエラVSキュラソーの試合時間が重なるので、徳川洋文監督は雨方コーチに声をかける。
「偵察してきてほしい」
「わかりました」
わたしは部屋へもどって、妻の遺影に「アメリカの世界選手権大会が開幕した。アメリカでも天女になって舞いおりてくれ!」と語りかけた。