167.「おかあさんはいつもそばにいるような気がする」

  1. 朝飯前の朝飯

「おかあさんはいつもそばにいるような気がする」

 朝、早起きしたが、いろいろ雑用をこなすと家を出るのが遅れた。

 7時34分発の快速電車のグリーン券を購入しようとしていたら元PTA副会長の恩田敦さんとあい、ことばを交わし別れたあとメールをもらう。

「暑気払いをしましょう」

「ぜひやりましょう」

    しかし暑気払いをするとなると、母がいてくれているいまか、三男を預けるしかないと思う。

 仕事を早々に切りあげ、帰りの電車を東京駅19時発の特急わかしおにする。

 クリーニング店へすべりこむと、店員が「もう閉めました」と言いながらうけつけてくれたのでお礼を言う。

 その後、ガソリンを給油し、ジャスコ(現・イオン)で食料を購入。

 母が「好きなものを買ってくるように」と言っていたからだ。

 三男には刺身を食べさせ、わたしは野菜中心にした。

 その際、中学校の1年学年主任、川栗邦雄教諭から言われた情報をもとに三男と会話する。

「父は小学校6年生のとき、おじいさん(父親)から『上級生と遊ぶな』ときつく言われた。そのとき中学生はもの知りで楽しいのにどうしてだろうと理解に苦しんだが、大人になってわかった!」

「どういうこと?」

「下級生と付き合う上級生はひまな人間が多いからだ。それと本来は同級生同士で話をしたりするものだろう?    そうじゃない場合、同級生とうまくいっていないのかもしれない」

「そんなに上級生とつきあってないけど」

「今後は同級生と話をするようにしろよ」

 本当は2学期が始まる9月の新学期に引っ越しや転校をするのがベストだ。

 しかしリトルリーグの世界選手権大会までに三男のメンタルに影響するようなことは控えたほうがいいし、アメリカからの帰国が9月1日になるので、実際9月あたまはムリだ。

 ただ、次男も中学2年生からわるくなったので、引っ越しをするなら一刻も早いほうがいいだろうと思った。

 話がとまると、母が三男に話しかけてきたので3人で会話になる。

「なにを話しょうるん? おかあさんのこと?」

「おかあさんはいつもそばにいるような気がする」

「わたしもよ。(三男を)『そろそろ起こそうか?』と尋ねると自分で起きてくる。(三男が)外出していて『そろそろ帰ったほうがいいね?』と話しかけると不思議と戻ってくる。おばあちゃんがひとりごとを言っているのはおかあさんと話をしているからなんよ」

「そうだったんだ」

「おれだけだ。亡くなってから一度も話をしていないのは……。亡くなるまえ、最後の家族旅行でこの家に帰ったとき結婚指輪をはずして病院へ戻っていった。その理由を知りたい。そして、おれと結婚してよかったかどうかも」

 これについては三男も母も回答しないのでひとりごとになった。

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