「また17対3よ、おくさん、この球場にいる!」
第4試合の決勝戦の試合開始は14時だ。
長男は「試合を見たいから残る」と言うので、両親と長女を誘って食事に行く。
近くに適当なレストランがなく、びっくりドンキー中葛西店まで車を走らせハンバーグやパスタを食べる。
球場へ戻ると、4対2で泉佐野リトルリーグが瀬田リトルリーグをリードしている。
長男に「4点の得点経過は?」と尋ねると、「ホームランかな?」と。
隣の山田父から「嘘つけ! きみは寝ていたからわからんだろう!」ときつい一発を浴び、長男は苦笑いしている。
第2試合が終わると、第3試合に向けて第1試合開始に続く1塁側応援席へ移動。
千葉リトルリーグ審判部長の米谷次郎さんが高揚している。
「いよいよ日本一だね! アメリカ行きの軍資金を用意しとかなくちゃ! 千葉リトルリーグが全日本リトルリーグ野球選手権大会へ出場するのは今回で4回目だよ。1回目は徳川監督の長男・陽平氏の時代。2回目が6年前でうちの息子もメンバー。エースが不調を訴え降板し、急遽登板することになったリリーフが極度の緊張感から試合にならなかった。3回目が4年前で初優勝して世界大会へ進んだ高本拓哉主将、平井裕介副主将(ともに当時)の時代だよ」
「全国には4回目、勝てば世界に2回目ですか?」
ここで奥星余市PTAの木田母からメールが入る。
「試合経過はどうですか?」
「準決勝を勝利した。次が決勝だよ」
「負ける気がしないでしょう!」
「点をとりすぎたので、あとが怖い。打線は水もので貧打に泣くこともあるから」
「がんばって!」
いよいよ決勝の戦いの火ぶたが切られる。
前の試合までは冷静だった父親も決勝ということでPENTAXを構えている。
この試合も千葉リトルリーグの打棒が止まらない。
7番片島選手のセンターオーバーのホームランがゲームをつくり、4番井村選手にも満塁ホームランが飛び出し、12安打中6本のホームランという猛攻で試合を決める。
この5回裏までまたも17対3だ。
わたしはグラウンドよりもスコアボードが気になってしかたがない。
母親たちも「ヤマチー! また、おくさんの誕生日だよ! おくさん、きっとこの球場にいるよ!」と叫ぶ。
ただし、6回裏、自軍のエラーで1点献上し17対4で試合終了となる。
この1点はおまけか?
試合後、千葉リトルリーグの応援席は歓喜の渦だ。
ハイタッチや「やったー!」「やったー!」といって泣いたり叫んだりしている。
妻の悲願だった「世界選手権大会出場!」が、いよいよ現実のものとなった。
わたしはグラウンドにいるかもしれない亡き妻に呼びかけた。
「夢がかなったな! リトルリーグの聖地、アメリカのペンシルベニア州ウイリアムズポートへ一緒に行こうな!」と。