145.「あなたたちは料理しても食べてくれん」

  1. 朝飯前の朝飯

「あなたたちは料理しても食べてくれん」

 朝、妻(母親)の墓地と納骨について長男がやや感情的になった。

「おかあさんのお墓はどうするの?」

「伯父さんが本家の墓地の隣を分けてくださるらしい」

「おかあさんは『あそこは蚊がいっぱいでるからイヤ!』って言ってたじゃん」

「……」

 わたしが返答に窮していると、義父が助け船をだしてくれた。

「あそこがええ。立派な本家さんが『隣へどうぞ』と言ってくださるならこれ以上のことがあるもんか。ありがたい話じゃ!」

 このひとことで流れができ、長男もそれ以上反論しなかった。

 義父、義兄、父、妹が大網駅10時35分発の快速東京行きで帰るらしい。

 四十九日法要が7月25日と決まり、「みんなで聴敬寺を訪問しよう」となるが、カーナビでないとたどり着けないようなところにある。

 総二階で一般の民家にも見える。

 せっかく来たのでインターフォンを押すと、中から副住職夫人がでてくる。

 わたしが口上を述べていると、自分の携帯がなったので席をはずす。

 戻って「お寺に見えませんね」と質問すると、妹が「お義兄さんも同じ質問をされちゃった」と言う。

 夫人は「うちも子どもが4人なので、何年かしたらこのようになるのかな?」と述べる。

 寺内を下見させてもらい、法要の予約を確認して、父たちを土気駅へ送る。

 長男、次男、三男と4人が残った。

 三男が「サーティワンアイスクリームを食べたい」というのでみんなでトリプルにかぶりつく。

 留守番の母と長女にはマンゴーとパイナップルのシェークを持ち帰る。

 母は父たちと一緒に帰りたかったようで、「あなたたちは料理しても食べてくれんし、片づけても『置き場所が変わった』と言うから大してできない」とグチる。

 これには誰も返しができない。

「いちどに多くつくりすぎるからだよ」と言おうと思ったがタイミングがわるいのでだまった。

 父の携帯に連絡した。

「無事に新幹線に乗れた?」

「(妹が)東京駅でのんびりお茶を買っていて新幹線ひかりに乗り遅れた」

 しばらくして父から連絡があった。

「のぞみに乗り換え、新大阪駅でひかりに乗り込んできた」

 夜、義父と義兄、父と妹それぞれが無事帰宅の途についたとの連絡が入り安堵。

 妻がいなくなり、みなが帰ると、急に火が消えたようなわが家だった。

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