65.「行こう! 行こう! 北海道へ」

  1. 朝飯前の朝飯

「行こう! 行こう! 北海道へ」

 わが家にとって長い長い冬の時代に終止符が打たれ、春が訪れるかもしれないと思わせる出来事があった。

 長女が1枚のコピーを短大から持ち帰り、次男に尋ねた。

「ここ受けてみない? 北海道の奥星学園余市高校、読みかたは『おくせいがくえんよいちこうこう』って言うの」

「興味ねー! 1級下のやつらと一緒にやれっかよ」

「それがねぇ、中途退学したひとを積極的に受け入れている高校なの。だからタメ(同級生)も多いと思うよ」

 長女と次男の会話に妻が割って入った。

「行こう! 行こう! 北海道へ」

   次男は無言だが否定しないので受け入れたのかもしれない。

 かくして次男と妻、わたしの3人は年の瀬に新千歳空港行きのANA機へ搭乗。

 新千歳空港駅からは快速エアポートで小樽駅に着く。

 小樽では残雪を踏みしめながら、観光客の定番である小樽運河や日本銀行小樽支店跡、小樽オルゴール堂を見学し、北一ガラスでコップや置物を購入。

 小樽築港駅へ戻って小樽ヒルトン(現・グランドパーク小樽)にたどり着く。

 わたしと妻は「いいね!」「いいね!」といってトリプルベッドの室内を気に入った。

 次男に声をかけてみる。

「なにが食べたい?」

「寿司がいい」

 ホテルのフロントで尋ねると、「小樽の寿司屋はいずれも高額。この店は比較的リーズナブルです」と教えられた近くの回転寿司の暖簾をくぐる。

 回転寿司といってもなかなか本格的だ。

 翌朝、小樽築港駅から函館本線で余市駅へ向かうと一面が銀世界。

 次男が「こんな寒いところはいやだ」と言い出さないか気が気でならない。

 余市駅からはタクシーに乗り10分弱で高校へ着く。

 校舎を見上げるといちばん高いところへ十字架が屹立していて、「ここはキリスト教の学校だから、心が傷んでいる次男をきっと救ってくれるはずだ」と希望を見いだす。

 校舎から出てきた生徒たちは一様に茶髪やロン毛、私服だ。

 前の学校では頭髪を注意され登校しなくなった次男だが、ここは大丈夫かもしれない。

 期待と不安を胸に玄関の扉を開けた。

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