12.妻の入院

  1. 朝飯前の朝飯

妻の入院

 朝6時に目が覚めるが、妻はここちよく眠っている。

「神様はなんでこんなに、か弱く、やさしく、愛らしい人間を追いつめなければならない?」と哀しい怒りが込み上げる。

 長女と長男の「ラジオ体操をするので6時20分に起こして」の頼みは覚えていたが、それより妻を1分1秒でも長く寝かせてやりたいと思い、目覚まし時計を7時すぎにセットし直し、ずっと妻の顔をながめる。そのうち「ジリジリ」という音がして、妻や子どもたちが目を覚ました。

 妻の入院のため9時までに着くよう8時に家を出る。いつものように千葉東金道路を使うと途中まではスイスイだが、千葉大病院へ近づくと渋滞で一向に前へ進まない。

   仕方なく妻と長女を車から降ろし、病院で入院の手続きをさせる。長男も次男も「ママと一緒に行きたい!」と騒ぐが、「おかあさんの負担になる。甘えるなよ」と諭した。

 駐車場に車を入れると荷物を持って産婦人科病棟へ急ぐ。

   妻が最初に入室したのは6人部屋の207号室。この部屋はすでに手術を終え退院を間近に控えた人や、手術まで日を要する人たちで、想像したような緊張感は感じられない。

 入院と言っても、診察や治療がない。それならば、手術の前日や前々日に入院させてくれればと思うが、土日の入院は基本的になく、帝王切開の24時間以上前から胎児の肺を促進させる点滴を何度か行わなくてはならないという理由もあった。

 妻には昼から給食があるので、付き添いの親子4人はバスで千葉駅まで出掛けて食事する。

   いつものように人数マイナス1を注文するが、子どもたちは「おいしい!」と言いながら案外食べない。ましてやわたしは築山医師の宣告以来、食が進まない。いつもは子どもの分までたいらげるところが大量に残る。

 病院の面会時間の19時までいて、家へ戻る。長女が「きょうは4人で一緒に寝たいな!」と言うので「いいよ」と応えて2階で一緒に川の字のように寝る。

 入院2日目、母・義母がのぞみで来葉するので千葉駅へ14時に迎えに行く。

 カーラジオからは「まちぶせ」がかかっていて、長女が「ママの好きなユーミンの曲だ!」と言うので、思わず涙が頬をつたう。

 そのまま千葉三越の駐車場に車を停めて、妻のために羊羹を買い、母・義母が到着すると、千葉大病院へ向かう。

   病院で子どもたちは、羊羹や菓子を食べたあとかけずり回る。妻は両おばあちゃんが来てくれたことで安堵の表情だ。

 夕食は千葉市あすみが丘(現・千葉市緑区あすみが丘)の寿司&うどんレストラン「大京」で寿司定食を頼んだ。子どもたちは食欲旺盛で「おいしい!」を連発しながら寿司もうどんもたいらげた。わたしはあまり食事が喉を通らず、次男が箸を付けなかった残りで充分だ。

 わたしは自分だけが妻の経過や病状を知っているのではいけないと思い、子どもたちが寝静まると妻のことについて母・義母に説明。医師から言われた通りを知らせた。

   義母は「仕方ない」と割り切ったかと思うと、「4人も子どもをつくるからじゃ!」とわたしを責める。わたしはそれに反論しないで口を閉じた。

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