妻の背中に1ミリ台の白い突起物ができた。
地元のクリニックでは「切ってはいけない」と言われながら千葉市土気(現・千葉市緑区土気)の診療所で「切りましょう。大丈夫」と言われた。
妻は「大丈夫」のことばを信じて切開した。
だが、根っこを残して切ったためか、やがて切っても切っても黒く肥大化する。
千葉大学付属病院では、「メラノーマ(悪性黒色腫)、いわゆる皮膚ガン。黒さといい大きさといいステージ4で、5年以内に死にいたる確率は80%」と宣告された。
目の前が真っ暗になりながら、同時に「10年もてば大丈夫」のことばを信じた。
第四子の帝王切開の2週間後に、背中の患部と脇のリンパ節を切り取る大手術が行なわれた。
妻は10年もったが、12、3年後に肺と脳へ転移、メラノーマが再発し、再び闘病生活へ。
家族は一縷の望みを信じて協力しあったが……。
これは起伏に富んだ二十余年の家族の記録だ。
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