281.「このままでは進級が危ういです」

  1. 朝飯前の朝飯

「このままでは進級が危ういです」

 三男は中間テストの初日、英語の試験日に急性ストレス性胃炎で登校できず学校を休み三教科が0点になった。

 中間テストの発表後に担任の浦本教諭からわたしの携帯へ連絡があり三者面談が行なわれる。

「お忙しいところすみません。きょうはかれ(三男)成績の件でご足労いただきました。三教科のテストを受けられなかったということもあるのですが、他の教科もこのような状況です」

「進級はどうですか?」

「このままでは危ういです。せっかく野球をがんばっているので勉強も同様に取り組んでほしいのですが。

「順位を教えてください」

「下から2番目です。といっても最下位の生徒は不登校気味でテストを1日受けただけですから……」

「(三男に)おい、この高校はおまえには勉強のハードルが高すぎた。退学して偏差値40代の千葉の私立高校へ転校しよう。そこで成績を上げろ。『鶏口となるも牛後となるなかれ』で、このまましっぽじゃしょうがない」

「おとうさん、それはちょっと厳しすぎます」

「いえ、厳しいのは息子の成績です」

「アテでもおありなのですか?」

「例えば千葉県から甲子園に出場した木更津総合高校の偏差値は40代半ばです。『地引雄貴捕手はそこで内申点がオール5、素行も申し分ないということで早稲田大学へスポーツ推薦で進学した』と聞きました。あるいは野球ではないのですが、講演会でお呼びしたことがあるIさんは『地元の県立高校を落ちて偏差値40代の私立高校へ入学して小論文と英語のみ取り組んで、小論文が全国3位になって慶應義塾大学のAO入試に合格した。大学へ行ったのは親族でわたしひとりだけ』と言っていました。息子はもちろん早稲田大学や慶應義塾大学はムリとしても、偏差値40代の高校で一芸を発揮すれば意外な大学へ受かるかもしれません。逆に息子が偏差値63のこの高校で推薦が効く内申点4.0にあげることのほうが至難でしょう」

 黙っていた三男が口を開いた。

「イヤだよ。この学校は楽しいから続けたい」

「じゃ2年生に進級できなくて、来年の1年生と机ならべて野球も一緒にやることになるぞ。それだもいいのか?」

「ヤだ!」

「だったら転校するか、ここで野球以上に勉強に身を入れて取り組むしかないだろう!」

「わかった。勉強する」

「浦本先生、次回のテストも成績が悪かったら即退学させていただきます」

「おとうさんの意向は承りました」

 三男は渋い顔をしている。

 英語が苦手な三男はこれからどうなっていくのだろうか……。

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