266.「披露宴しないんなら結婚もしない」

  1. 朝飯前の朝飯

「披露宴しないんなら結婚もしない」

 沖縄のシーサイドホテルザビーチに泊まって年末年始を迎える。

 カウントダウン後、午前零時とともに「バーン」「パチパチ」という音がする。

 高層階から窓外をのぞくと、北谷町のカウントダウン花火大会が繰り広げられる。

 われわれはしばし眼下の花火を食い入るようにながめた。

「きれいだね」

「このホテルを予約してくれありがとう」

“不幸のオリンピック日本代表選手”を自認していたわたしに突然、春がやってきた。

 その日の午後、わたしは彼女が入浴している時間に花屋で赤い薔薇をと思ったが、正月早々開いていない。

 観光ショップで一対のシーサーを買ってプロポーズした。

 彼女が受け入れたうえで各論になると意見の相違がある。

「お子さんに会わせて。うちの子は修羅場を見てきているのですんなり受け入れると思うけど、山ノ堀さんちは反対かな? 結婚式はどこがいい?」

「もちろん子どもに会わせるけど、結婚披露宴まではいいんじゃない? おたがい2度目なんだから」

「披露宴しないんなら結婚もしない」

「わかった」

 わたしは披露宴も家族程度を想定していたが……。

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