「おまえはいつも気づきと動きが遅いんだよ!」
次男がみずからの進路について初めて連絡してきた。
「おとうさん、おれ大学へ行きたいんだけど」
「はーっ、内申点は5段階評価でいくらだ?」
「2.5ぐらいだけど」
「そりゃムリだ。そんなひどい成績で受け入れてくれる大学はない。あったとしても大学とは名ばかりで高卒のほうがましなところだよ」
「じゃどうしたら行けるの?」
「そうだな? 3学期以降の内申点を5.0にして、後期で生徒会の役員をすることだな。それでもようやくスタートラインだ」
「そんなのムチャだよ」
「ムリを言っているのはおまえだろう。元ヤンキーや元ひきこもりの先輩たちがミッションスクールの特性を活かして指定校推薦で偏差値の高いICU(国際基督教大学)や青山学院大学、明治学院大学、北星学園大学等へ進学しているの、知っているだろう。とくに明治学院と北星学院は毎年複数の人間を受け入れてくれている。彼らは1年生のときからまじめに授業を受け、テスト勉強に精だし、生徒会の役員などについてきたから栄光をつかめた。おまえはそれをしないで授業を中抜けしたり、試験前に遊んで謹慎のヤマだ。結局、この世のなかは努力したものが報われるようになっているんだ」
「おれだって努力をしている」
「奥星余市なら授業で先生の言うことをきちんと聴いてノートしていたら5段階評価で5.0は容易にとれる。それなのにいままで勉強してこなくて親にどうしろって言うんだ? 大学は高校と違って担任の先生があーだこーだと言ってくれないから自分でこつこつ勉強しないと留年する。それがムリなら大学はあきらめてはたらけ!」
「だったら勉強して5.0をとるよ」
「そうか」
中学では志望校を受験するために試験の2か月前ぐらいから勉強しだしたが遅きに失して不合格になった。
授業料も交通費も高い千葉県の私立高校を出席日数不足で中退し、それだとバイトもできないことに気づいて、1年遅れで北海道の私立高校へ入学した。
ここでは「タバコ1本、ビール1缶10万円」の謹慎を10回ほどくらい、これまでまったく勉強をしていないので、卒業後は当然はたらくものと思っていた。
それが大学へ行きたいと言いだし、「おまえはいつも気づきと動きが遅いんだよ」と思いながら親として当惑した。