「おとうさん、ゼッケン縫うの、前後逆だよ!」
アメリカから帰国して出勤2日目、残業で22時帰宅となる。
三男はきょうも死んだようにベッドで寝ている。
野球選手なので食べさせないと大きくならないだろうと思い、可哀想だが起こして尋ねる。
「食べたか?」
「まーだ」
「これを食べよ」
「……(寝ぼけているのか答えない)」
「報告はなにかないか?」
「おとうさん、体操服を洗濯して、ゼッケンつけて」
わたしは自宅で洗濯後、コインランドリーで乾燥機にかけて持ち帰り、ゼッケンを丁寧に半返し縫いする。
生来、几帳面(?)な性格なのと、亡き妻なら寝る間も惜しんでとりくむだろうと思い、同様にうちこむ。
終了後、時計を見ると2時半すぎで、その他の洗濯物を干し終わると時計が3時をさしている。
この時間、アメリカだとアフタヌーンで、疲れているのに目がさえてきて皮肉だ。
5時半、あたまが痛いがむりやり起床し朝食の準備をしていると、三男が6時に起きて声をかける。
「おとうさん、体操服を洗ってゼッケンつけてくれた?」
「ああ、バッチリだろう!」
「えっ、おとうさん、ゼッケン縫うの、前後逆だよ!」
「うそー、野球と一緒で背番号じゃないのか?」
「前だよ! もういい4点でいいから早く直して!」
「わかった」
三男は朝食をかけこみ、体操服の簡易4点縫いで中学校の体育祭予行演習へ出かけて行く。
自分の思い込みのせいとはいえ、半返し縫いに費やした時間を返してほしいと、くやし涙をながしながら、会社で時差ぼけ、睡眠不足と闘いながら仕事をやり終えた。