169.アメリカツアーへ全員「行きたい!」

  1. 朝飯前の朝飯

アメリカツアーへ全員「行きたい!」

 7時45分、三男を千葉リトルリーグの喜多グラウンドへ連れていく。

 弁当を注文しようと思うと、三男が既に生姜焼きの大盛りを頼んでいたので代金のみ支払う。

 徳川監督夫人に伝える。

「妻の四十九日の法要があるので半日で迎えにきます」

「わかったわ」

 帰宅して就職1年目の長女、大学2年生の長男、高校1年生の次男を起こすが返事だけだ。

 思い立って、「その後の妻と子どもたち」を作成し印刷する。

 子どもたちが起きてきたのは10時半を過ぎてからで、まるでカエルの大合唱のごとく同じように尋ねてくる。

「なにを着ればいいの?」

「おまえたちは喪主じゃないから白カッターシャツ、黒か紺のズボン、ノータイでいい。靴は黒か白がいい」

 アメリカツアーについて尋ねると、全員「行きたい!」と言う。

 出費がかさむが、先日入金のあった生命保険の死亡保険金200万円をあてるしかない。

 夫であるわたしが死んだ場合は数千万円おりるが、専業主婦のいのちの値段があまりに低いと愕然としたものだ。

 長女に「(三男を)迎えに行ってくれ」と頼むと、「場所がわからない」とのことで長男を同行させる。

 自分の喪服を探すが、制服がない奥星高校へ通っている次男がちゃっかりわたしの夏用ズボンを履いているので暑いが冬服にする。

 家を出るのは12時すぎ。

 義兄からは「早く着いたので先に行って待っている」、従兄からは「一本乗り遅れた」とのメールがある。

 いったん聴敬寺に着いて、弟へ杉並の叔父・従弟の迎えをたのむ。

 法要を営んでくれるのは副住職らしい。

 布施と御膳代を渡して、遺影、遺骨、位牌、香典をおかせてもらう。

 父が持参してくれた大手饅頭を「これは岡山でいちばんの菓子です」と言って渡す。

 14時に導師の合図で法要が開始となる。

 22人の出席者が注目する副住職はバリトン歌手のような声量で読経を唱える。

 焼香後、副住職がいい法話をしてくれた。

「法事とは仏法と大事の略語です。法事は故人のものでなく、ここにいる出席者全員のものです」

 廣田家、石荒家は自家用車、その他はバスへ乗り込み、四季懐石「かのと山荘」へ。

 わたしが「同じ千葉市ながら法事は上総(かずさ)、会食は下総(しもうさ)です」と紹介すると、杉並の叔父から「いい場所を知っているね」と言われる。

 影膳がある場所へ遺影や遺骨をおき、施主の挨拶を次のように述べる。

「妻が早世しましたが、ずっと子どもたちのそばにいてくれています。特に悲願であった『三男の野球チームを全国大会、世界大会へ』は、貧打の三男が二塁打を放つなどでかないました。準決勝のオール大宮リトルリーグ戦で17対3、決勝の泉佐野リトルリーグ戦でも最終回の途中まで17対3でした。妻の誕生日は3月17日です。家族全員でアメリカの世界大会へ応援に行ってきます」

 しばらくして両家の親戚の家族ごと自己紹介の口火を、妻の従姉が切ってくれた。

 お開き後、ラスクのおみやげを渡し、かのと山荘で廣田家・石荒家、鎌取駅で町田の従兄夫妻、杉並の叔父・従弟、弟一家と別れる。

 われわれは土気の聴敬寺でバスを降車。

 わたしがノア、長女がカローラを運転して家路に着く。

 妻の遺影、遺骨、位牌を和室へ安置する。

 子どもたちはお腹が空いたというので、開店したばかりの坂東太郎大網店へ行く。

 寿司、天婦羅、うどん、そば等メニューが豊富だ。

 しかも新人の店員も応対がぎこちないながらも一所懸命さが伝わってくる。

 坂東太郎の理念は「親孝行」だ。

 子どもたちをアメリカへ連れて行くことになったが、わが家にもいつか親孝行が訪れてくれるのだろうかと思う。

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