160.「『おかあさんのかわりをする』って、嘘なの?」

  1. 朝飯前の朝飯

「『おかあさんのかわりをする』って、嘘なの?」

 千葉リトルリーグは、全日本リトルリーグ野球選手権大会で優勝し、世界選手権大会出場の切符を手にした。

 早速、祝勝会の案内をもらう。

 しかしこの日は大里綜合管理での第29回フォーラム「ウチナーンチュ(沖縄のひと)の沖縄 ヤマトンチュ(本土のひと)の沖縄」もある。

 わたしは長女から責められた。

「おとうさん、きょうはもちろん野球の祝勝会へ行くよね!」

「フォーラムを外すわけにいかない。祝勝会にはかわりにでてくれないか?」

「えっ、きょうのような日は野球でしょ。親が参加しないなんて、わが子が不憫だと思わないの? わたしは親じゃないから行くわけないでしょ!」

「きょうのフォーラムは沖縄旅行のさいに知己をえたジャーナリストをお呼びしている。古くは米軍の上陸戦を国内で唯一しいて、いまも米軍基地の国内75%を押しつけている沖縄の現実をウチナーンチュはどう見ているのかを知りたくて、どうしても行く必要があるんだ! 昭和天皇も最後まで沖縄のことを気にかけていたんだ!」

「『おかあさんのかわりをする』って言ったの、嘘なの?」

「嘘じゃないよ。からだがふたつあれば間違いなく両方行く。でも二者択一なんだからしょうがないだろう」

 わたしは祝勝会に顔をだして、徳川洋文監督等に挨拶して辞した。

 フォーラムには懇親会から参加し、講師の鈴木孝史氏(東京出身の元『琉球新報』記者)に遅延の非礼を詫びた。

「きょうは遠路、沖縄からお越しいただいたのに、講演を受講できなくて申し訳ありませんでした」

「いえこちらこそ講演の機会をつくっていただきありがとうございます。きょうは息子さんの野球チームが全国優勝されたそうでおめでとうございます」

「ありがとうございます。亡き妻の悲願でした」

「おくさまも残念なことでした」

 フォーラム懇親会が終わると、わたしは鈴木夫妻に挨拶して自宅へ一目散で帰った。

 わたしは三男に「よくやったな! きょうもおかあさん、グラウンドへきてくれたな」といって肩をたたいた。

 三男は肩を斜めにして照れながらも、ニコッと笑った。

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