14.帝王切開で三男誕生

  1. 朝飯前の朝飯

帝王切開で三男誕生

  8月6日9時から妻の帝王切開の手術がある。自宅を6時過ぎに出て病院へ7時に着き、義母とふたりで手術室へ見送る。

「大丈夫じゃけー! 気張られーよ!」

「うん」

「肩の力を抜いてリラックス! リラックス!」

「うん。あとのことはよろしくね」

「帝王切開じゃけえ、陣痛の苦しみがないぶん得したようなもんよ。もうひとりつくろうとは言わんけーな」

「もう4人で充分よ(笑い)」

 妻は緊張しつつ笑顔で産婦人科の手術室へ消えた。

   妻と同室の横澤英子さんも同時刻の手術だが、旦那さんは「鎌ヶ谷から車で2時間以上要した」と言いタッチの差で間に合わなかった。その旦那さんと世間話で、お互いに気をまぎらわせる。

 10時15分に産婦人科の看護婦さんに声をかけられ20メートルほど走ると、そこには保育器の中で懸命に生きる赤児がいた。産婦人科の看護婦さんからは次のように言われた。

「こちらにいらっしゃるのが千葉市立海浜病院の佐久間瞬先生と看護婦さんです。赤児は32週の早産のため、人工呼吸器を付けて救急車で病院まで搬送します」

 わたしは一礼して、救急車を見送る。

 地下1階から2階の病棟へ戻り、義母と一緒に妻の手術を待つ。

   11時、苦しそうな顔の女性を乗せた担架が戻ってきた。「あっ、妻だ!」と叫ぶと看護婦さんから「奥さんの意識はあります。もう少ししたら、声をかけてあげてください」と言われる。

 その後、海浜病院に向けて車を走らせる。3階のNICU(新生児集中治療室)に着くと、手洗いの仕方を教わり入室。

   先ほどの佐久間医師と看護婦さんと面談。

「無呼吸状態を避けるため、当分人工呼吸器を使います。これを1週間つづけると失明の可能性があります。母乳(初乳)が欲しいです」

「千葉大の先生から抗がん剤投与があり、途中で乳を止めるのが厳しく無理だそうです」

「エイズ検査などで陰性の女性の母乳を飲ませることと、血小板の減少で出血した場合、血液製剤の投与を了解してください」

「すべてお任せします」

 わたしは佐久間医師の誠実な話ぶりに応え、書類へサインする。

 帰り際、1階で入院手続きを済ませると養育医療制度のことを知らされた。1か月65,000円以内の負担でよいとのこと。申請書と源泉徴収票がいる。会社へ源泉徴収票を送ってもらうよう手配する。書類の提出先は東金保健所とのこと。

 海浜病院を出て、再び千葉大病院の産婦人科へ向かう。病室で妻が寝ている。わたしも眠くなり横になろうとすると、妻の点滴の管に引っかかり、ベンチで30分ほど目をつむる。起きると、妻の体調が戻り、意識もはっきりしている。

   目の前に赤児がいなくても母乳を絞り出す姿がいたたまれない。

 義母を乗せて家路へ向かう。途中、スーパーサカモトで食材を購入。

   家に着くと母から「買いすぎで冷蔵庫に入らんがな」と注意される。

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