163.「この曲、おかあさんが好きだったの!」

  1. 朝飯前の朝飯

「この曲、おかあさんが好きだったの!」

 前日に終電で1時すぎに帰宅し、ひと眠りして4時すぎに起床、大網駅で5時18分の始発に乗車し、蘇我駅で京葉線へ乗り換える。

 新幹線のぞみのA席へ座ると、B・C席に誰も乗ってこない。

 新大阪駅へ着くと、大阪駅を経由して環状線で大阪城公園駅へ。

 目的地のホテルニューオータニ大阪をめざして歩きながら、途中で大阪城の天守閣をあおぎ太閤秀吉の時代に思いをはせる。

 会場へ着くと、展示担当の平岡寛和次長と本間四朗課長がすでに到着している。

「早いねー」と声をかけると、本間課長は「昨日からいます。来週も大阪です」だと。

 展示を手伝っていたら関連会社の女性が「きょうはこのネームプレートをつけてください。これがないと館内を歩けません」とアナウンスしながら走っている。

 13時開会後、来賓に安倍晋三元総理(当時)の顔があり、それでセキュリティーにうるさいんだと納得する。

 20時半まで懇親レセプションに参加し、弟と21時に岸辺駅の「醉亭」で待ち合わせる。

 弟は何も食べていないらしくサラダや刺身盛り合わせ、焼きそばなどを注文。

「兄貴は?」

「(ホテルニューオータニのメニューカードを見せ)もう食べたよ」

「フレンチから大阪のたこ焼きまであってすげーっ! うちの会社も景気のいい時代は社員大会をホテルでやっていたけど、このご時世、問屋はきつい」

 大阪の会社へ復職した長女は22時すぎに到着。

「おなかが空いた」と言って、刺身や焼き鳥、焼きそばに手を伸ばす。

 聞けば「尊敬している店舗の先輩女性が出産休暇に入ったので相談相手がいなくなり不安だ。アメリカの応援にはぜひ行きたい」とのこと。

 酔亭には約2時間いて、カラオケボックスへ入る。

 最初に長女がマイクを握り「この曲、おかあさんが好きだったの!」と言って今井美樹「PRIDE」を歌う。

 弟は浜田省吾の「もうひとつの土曜日」、わたしは尾崎豊「I love you」にする。

 遅いので2曲ずつにして店を出る。

 長女の部屋へ行くと、予想通り片づいていないのでビジネスホテルへ泊まる。

 7時すぎに起床し、駅へ向かって歩いていたら平岡次長から電話があり、「昨晩は違うホテルへ泊まった。きょうは東京へ帰るよ」と伝える。

 モノレールで千里中央駅に行き、御堂筋線で新大阪駅で降り、のぞみの指定席の時間を変更して13号車へ座る。

 会社へ着くと仕事が山のように溜まっていて、メールや電話で返信して、17時半退社し、ジャスコ(現・イオン)で買い物をする。

 帰宅して「毎日、隠しごとをしないで何でも話しあおう!」と約束した三男に声をかけた。

「なにかあるか?」

「あしたパスポートをとりに行きたい。みんなはもう行ったらしい」

「わかった。あした15時ぐらいに帰ってくるので一緒に行こう! ほかになにかないか?」

「ない」

 仕事と家事と育児、戦争のような毎日が、寄せては返す波のようにさっとすぎていく。

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