73.「あいつをよろしく頼む!」

  1. 朝飯前の朝飯

「あいつをよろしく頼む!」

 十数年前に日本有数のコンサルティングファームの代表、内山清雄先生から「キノコがガンに効く!   奥さんに飲ませてあげるといいぞ」と健康食品「活里」を勧められた。

 妻に5年間ほど飲ませ快方に向かったので、やめていたことを思い出し、昼休みに販売先を調べて連絡をとる。

 わたしは妻に1日でも早く服用させたいと思い「購入に行きたい」と電話で伝えるも、「不在の場合があるので送りたい。明晩には届く」と言われる。


 1日3包ずつ服用、1箱33包入りを半年分の6箱注文。

 妻と会話する。

「あすから毎日飲み続けよ。『活里』で『活路』を見いだそう!」

「わかった。ありがとう」

「お義兄さんに伝えるべきじゃないか? 唯一の兄・妹なんだから」

「あなたが連絡して。ただし、おとうさんには言わないで。心配するから」

 岡山のメーカーで製造部長をしている義兄に電話すると「久しぶりじゃのー」の声。

 義姉の実家から伊予柑を贈られた礼も省略し、「妻の死期が近づいている」と言うも「はーっ」と返され話が噛み合わない。

 数年前に他界した義母は妻の12年前の手術に立ち会っていながら義兄にガンのことを黙っていたようだ。

 これは一から話さないといけないなと観念して説明する。

「前回、12年前の入院の時点で医師から『悪性黒色腫(メラノーマ)、いわゆる皮膚ガンでステージⅣ』と宣告されていた。そのときも抗ガン剤治療等を行なった。今回も抗ガン剤に加え、免疫細胞療法など最新の医療も試していくつもりだ」

「(義兄は少し間合いをおいて)いま電話していることを、あいつは承知しとるんか?」

「知っとる。本人に代わって電話しとる。『おとうさんには言わないで』と言うていた」

「わかった。あいつをよろしく頼む!」

 義兄はたったひとりのきょうだいを失うかもしれなくて本当はつらく悲しいはずなのにそんなそぶりも見せないで古武士のように毅然としていた。

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