75.「免疫力を高める十カ条」

  1. 朝飯前の朝飯

「免疫力を高める十カ条」

 会社でデザイナーの竹中俊男課長から「打ち合わせいいですか?」と連絡がある。

 応接室でひと通り仕事の打ち合わせを終えたあと、個人的な話になる。

「奥さんの具合はどうですか?」

「芳しくない」

「1月22日にテレビ朝日『報道ステーション』を見たとき、『がん難民コーディネーター』について放映していました。お役に立てればいいのですが」

 わたしは早速、休憩時間に書店へ走り、藤野邦夫著『がん難民コーディネーター ~かくして患者たちは生還した~』(小学館101新書)を購入した。

 治療方針に悩んだり、よりよい治療を探し求めたりして、医療界をさまようガン患者「ガン難民」の相談を無償で受け、病院や治療法を紹介し、患者本人や家族を励ましてきたという内容で素晴らしかった。

 蘇我駅で乗り換えのさい、長男へ迎えに来てもらうよう連絡する。

 帰宅すると、次男がテレビ前に椅子を置き音量を上げて見ながら、ときどき大笑いしているので腹が立つ。

 いつもなら「バカ番組なんか見るな!」と一喝するところだが衝突を避け、「音を下げてほしい。サラリーマンの飯の種、テレビ朝日『報道ステーション』に変えてくれないか?」で我慢する。

 三男もまだ起きているので、「小学生だろう。早く寝ろよ」と告げる。

 インターネットで竹中課長が教えてくれた「免疫力を高める十カ条」を長男と一緒に見た。

「免疫力を高める十カ条」〈安保徹著『免疫力を高める十カ条 自分ですぐできる免疫革命』(だいわ文庫)より〉

 ①日常生活でもっとも大切なのは、働きすぎないこと

 ②生きていれば悩みは当然あるだろうが悩みつづけないように心掛けること

 ③怒らないこと

 ④頭を使うより体を使うこと

 ⑤バランスのとれた食事を心がけること

 ⑥睡眠時間をきちんと確保すること

 ⑦いい人間関係をつくること

 ⑧趣味をもつこと

 ⑨笑いを心がけること

 ⑩五感を刺激する自然や芸術にふれること

 その後、大学生の長男に苦言を呈する。

「おかあさんのことをよく見てもらおうと思えば茶髪を黒髪に戻して見舞ったらどうか? 医師、特に国公立大出身の先生は小さいときから親や先生に逆らったりしないで勉強してまじめなひとが多いから見た目を重要視する」

「医者が患者を選ぶわけがない。同じように接しないと医者じゃないよ!」

「おまえは女性や友だちを一切見た目で判断しないか? お医者さんだって『見た目で判断するな!』と言っても、人間だからするだろう」

 納得しない長男へ藤野氏講演録の文章と最近あった事例を織り交ぜる。

「医師は1週90時間も働いている。忙しすぎて最新の治療方法に疎いひとも多いらしい。医師だって多くの患者がいる中でプライオリティーがある。おかあさんは12年前は若いし子どもが小さいから最優先で取り組んでもらえた。おばあちゃんは大腸がんの手術中に『この丸太は……』なんて言われたらしい。その点、皇族やときの総理大臣が生死にかかわるようなときは日本の最高水準の医師と技術で対応するだろう。おかあさんは今回、克本先生から『奥さんは、大名の子孫ではないですよね』と尋ねられた。父が『妻の祖母は福山藩の城代家老の末裔で、わたしの祖母の生家は伊予松山藩の家老(年寄)でした』と言ったら『あっ、城主でなければいいです』とあっさりだ。明治時代の爵位は平成のこの世もまだ生きているのかもしれない。旧五爵と政財界トップはいまも別格だ!」

 わたしが理詰めで話すと、長男は黙ってしまった。

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