42.患者はガンと闘うべきか否か

  1. 朝飯前の朝飯

患者はガンと闘うべきか否か

 8時前に家を出て、妻の検診のため千葉大病院へ向かう。

 妻を玄関前で降ろし、わたしは損保会社や海浜病院、ダイエーで用事を済ませ千葉大病院へ戻る。

 だが、妻は約束したロビーにも、皮膚科待合室にもいない。

 看護婦さんに尋ねると、「帰られましたよ」と言われる。

 わたしは、これは間違いなく9階の産婦人科病棟だとにらみ、エレベーター前に立つ。

 そんなとき、妻がエレベーターから笑顔で降りてくる。

「きょう、おれは出張なのになにをのんきに!」と怒りがこみ上げてきて、わたしは妻に当たる。

「なにやってるんだ!」

「喜多文恵さんがきょういっぱいいると聞いたので行った。ちょっとだけだよ」

「(わたしは冷静になり)入院はいつになったの?」

「白血球が正常値に戻ったので、いつ入院してもいい状態だけど、ベッドが空いていないので、来週の火曜。田川一真先生からかゆみ止めと風邪薬をもらった」

 会計受付をすませた妻を乗せ、わたしは大急ぎで自宅へ戻る。

 途中、薬局とガソリンスタンドへ寄り、家で時刻表を見るとちょうどいい電車がないので食事をとる。

 取材用カメラと飛行機チケットがある会社へ寄り、羽田空港へ向かう。

 急いだわりにフライト1時間前着の余裕だ。

 機内で本間四朗主任(当時)から借りていた『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋社)を読んだ。

 ガン治療に苦しむ患者たちに向けて、「手術はほとんど役にたたず、抗ガン剤治療に意味のあるガンは全体の1割にすぎず、検診は百害あって一利もないことを知ろう。無知や誤解にもとづくガンについての認識を改め、後悔しないため、自分のガン治療法は自分で決める。そのための書」とある。

 妻に病名を知らせないまま抗ガン剤治療を強いている身としては、とても複雑な気持ちになる。

 富山空港で高岡駅行きのバスに乗車すると、車内では高岡の観光案内が流れ、特に日本三大大仏と万葉の里をPRしている。

 タクシーで岡澤事務所へ着くと、岡澤輝久所長からコンピュータグラフィックスを使った会社案内や異業種交流スクールの資料を見せてもらい、所内LAN構築の青写真などを聞く。

 岡澤所長はカゴの中にある未決書類などに目を通し、「あすから名古屋へ出張だから……」とスタッフ全員へボイスメールを録音し、「さあ行こう!」と言い、わたしを連れて高岡大仏そばの小料理屋とニューオータニの近くのスナックへ。

 朝9時に鷹山事務所の鷹山高次所長から約1時間のインタビュー後、アルミ鋳造の関与企業を訪問。

 年商に匹敵する設備投資後におりからの不況に遭遇し、生命保険証券を担保に借り入れ、ピンチを乗り切ったという、筋金入りの経営者へのインタビューは真に迫るものがあった。

 鷹山所長から寿司屋で、にぎりを馳走になる。

 富山空港からのエアチケットがとれなくて、北陸本線特急電車と上越新幹線に乗る。途中、広大な日本海に目をやり、本を読み、あさひに乗り換えると、あっという間に帰京。


 会社には18時到着し、豊岡主任から「早いですね」と言われる。彼は鉄道マニアで、ダイヤに詳しいうえでの発言だ。

 土曜出勤なので会社へ電話を入れて休む。

 妹を大網駅まで見送ったあと母を迎え、そごう茂原店で三男の出産祝いのお返しでタオル等を購入。

 フジテレビ「料理の鉄人」に中華の鉄人としてレギュラー出演している陳建一氏が経営する「四川飯店」茂原店へ入り、麻婆豆腐やラーメンを注文。

 妻は「わー、フジテレビ『料理の鉄人』の味だ!」と言って喜んで食べた。

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