219.「次男くんに、子どもできたの?」

  1. 朝飯前の朝飯

「次男くんに、子どもできたの?」

 朝、奥星余市高校PTAの木田母から電話がある。

「PTAの例会前に打ち合わせしませんか? 45期、高校1年生の母たちが大井町駅のカレー屋でランチするので品川駅で会いましょう」

 わたしは中学1年生の三男を長女へ託し、12時前に品川駅へ着くと、すでに木田母が待ち合わせ場所の時計前で立っている。

 駅ビルのつばめキッチンアトレ品川店へ入り、わたしが包みハンバーグ、木田母がシチューを注文すると、林田母の誘導尋問が始まる。

「副支部長を辞めるなんて尋常じゃないね。どうしたの?」

「理由は問わないでほしい」

「次男くんに、子どもできたの?」

「えっ、なんでわかるの?」

「なんとなくそんな気がした。彼らに会いに行かなくていいの? 相手の親御さんとだって会ったほうがいいんじゃないの?」

「勘弁してほしい」

「あなたはどうしたいの?」

「できたらおろしてほしい。はっきり言って子どもが子どもを育てるのなんてムリだよ」

「44期の白坂さんに男親の意見を聞いてみない?」

「あまり広げないでほしい。うわさが広がって高校を去ることになるかもしれないから」

 そのうち木田母の携帯に44期の海東華子支部長からメールが入り別れる。

 14時前、品川区中小企業センターへ木田母とは別々に着くと懐かしい顔があり、「ヤマチー、すごい久しぶり」とみんなに声をかけられる。

 次男と下宿が同じ小山父と挨拶を交わしていると、白坂父が寄ってきて大阪弁で「山ノ堀さん、どや?」と。

 そのうち木田母が「もう白ちゃんに話したの?」と割って入るので手を横にふった。

 会議の冒頭、「北星祭」へ参加した感想を述べあう。

「年々、保護者の参加が減っているのが残念だが、内容は充実している」

「楽しかった」

「食べ物ばかりでなく別の企画もほしい」

 わたしには「最近の様子を知らせてほしい」と言われたので、妻の逝去以降、三男のリトルリーグ世界大会出場や都内への転居について話す。

 懇親会で木田母が白坂父を連れてやってくる。

「白ちゃんに話したら楽になるよ」

「いやー、とても言えない。人生最大のピンチだから」

「どないしたん?」

「言いたくない」

「他言せえへんから言うてえな」

 わたしが根負けしてしゃべると、後日3人で北海道へ飛ぶことになった。

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