159.「また17対3よ、おくさん、この球場にいる!」

  1. 朝飯前の朝飯

「また17対3よ、おくさん、この球場にいる!」

 第4試合の決勝戦の試合開始は14時だ。

 長男は「試合を見たいから残る」と言うので、両親と長女を誘って食事に行く。

 近くに適当なレストランがなく、びっくりドンキー中葛西店まで車を走らせハンバーグやパスタを食べる。

 球場へ戻ると、4対2で泉佐野リトルリーグが瀬田リトルリーグをリードしている。

 長男に「4点の得点経過は?」と尋ねると、「ホームランかな?」と。

 隣の山田父から「嘘つけ! きみは寝ていたからわからんだろう!」ときつい一発を浴び、長男は苦笑いしている。

 第2試合が終わると、第3試合に向けて第1試合開始に続く1塁側応援席へ移動。

 千葉リトルリーグ審判部長の米谷次郎さんが高揚している。

「いよいよ日本一だね! アメリカ行きの軍資金を用意しとかなくちゃ! 千葉リトルリーグが全日本リトルリーグ野球選手権大会へ出場するのは今回で4回目だよ。1回目は徳川監督の長男・陽平氏の時代。2回目が6年前でうちの息子もメンバー。エースが不調を訴え降板し、急遽登板することになったリリーフが極度の緊張感から試合にならなかった。3回目が4年前で初優勝して世界大会へ進んだ高本拓哉主将、平井裕介副主将(ともに当時)の時代だよ」

「全国には4回目、勝てば世界に2回目ですか?」

 ここで奥星余市PTAの木田母からメールが入る。

「試合経過はどうですか?」

「準決勝を勝利した。次が決勝だよ」

「負ける気がしないでしょう!」

「点をとりすぎたので、あとが怖い。打線は水もので貧打に泣くこともあるから」

「がんばって!」

 いよいよ決勝の戦いの火ぶたが切られる。

 前の試合までは冷静だった父親も決勝ということでPENTAXを構えている。

 この試合も千葉リトルリーグの打棒が止まらない。

 7番片島選手のセンターオーバーのホームランがゲームをつくり、4番井村選手にも満塁ホームランが飛び出し、12安打中6本のホームランという猛攻で試合を決める。

 この5回裏までまたも17対3だ。

 わたしはグラウンドよりもスコアボードが気になってしかたがない。

 母親たちも「ヤマチー! また、おくさんの誕生日だよ! おくさん、きっとこの球場にいるよ!」と叫ぶ。

 ただし、6回裏、自軍のエラーで1点献上し17対4で試合終了となる。

 この1点はおまけか?

 試合後、千葉リトルリーグの応援席は歓喜の渦だ。

 ハイタッチや「やったー!」「やったー!」といって泣いたり叫んだりしている。

 妻の悲願だった「世界選手権大会出場!」が、いよいよ現実のものとなった。

 わたしはグラウンドにいるかもしれない亡き妻に呼びかけた。

「夢がかなったな! リトルリーグの聖地、アメリカのペンシルベニア州ウイリアムズポートへ一緒に行こうな!」と。

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