22.朋あり遠方より来る

  1. 朝飯前の朝飯

朋あり遠方より来る

 原稿作成に取り組んだのち千葉大病院へ行く。

 妻は「きょうの注射は、板東真子先生だったのよ」と言う。わたしが「どうだった?」と不安そうに尋ねると、妻の「いつもより少し痛くなかったような気がする」の表現がおかしかったので、ふたりして笑う。

 7時に目覚まし時計でなく次男が起こしてくれる。次男はこの間ひとりで寝られるまでに成長し、毎朝長男にあさがおの花の輪数を知らせる役目で電話口に立ち、わたしに「何番?」と催促する。

   わたしが番号を伝えると、次男はプッシュボタンをピポパ。

 朝食はピザトーストにする。パンにケチャップをつけて、その上に玉ねぎとピーマン、えのき茸を並べて、ピザチーズをまぶしてトースターでチン。焼き上がりも上々。

 次男に「食べよう」と切り出すと「きょうはお祈りはしないの?」と言う。

   わたしは「忘れてた。よく思い出してくれた」と感謝を伝え、妻の入院から藁にもすがる気持ちで始めた父親譲りのキリスト教式の祈りで、妻の健康、子どもたちの成長を願う。

 次男に「おいしいか?」と尋ねると「ピーマン要らない」と言う。わたしは「ピーマンは栄養価が高いから食べなさい」と命じると、渋々口にする。

 食事を終えると、会社の元同僚で八王子在住の村岡繁雄氏を迎えるための掃除と炊事・洗濯、布団干しを行う。

 昼食後、千葉大病院へ向かい、部下の原稿の添削を思い出し、「慣れない分野の原稿のせいかインパクトが弱い。Q&A方式にしたらどうか?」と助言する。

 電話を切ると17時30分。妻に「またあす来るよ」と言って、次男を抱えて車へ乗り込む。約束の18時の1、2分前に到着。

 村岡氏らしい人間をみつけ手を振る。彼は5分前に着いたらしい。

 千葉東金道路を通って大網に入り、ジャスコ(現・イオン)へ寄って買い物をする。次男は車中でずっと寝たままで、村岡氏に車で待ってもらう。

 レジを済ませて車へ戻ると、「一度起きて、また寝たよ」と次男の様子を伝えてくれる。

 家に着くと村岡氏へ入浴を勧める。その間に食事のしたくをして、次男と一緒に入浴。

 われわれはビール、次男はお茶で乾杯。わたしがこの間の妻の経過を説明後、氏が親会社へ移籍しながら退社に至った経緯を吐露する。

 彼ほど文章力のある人間はなかなかいない。退社は残念だが、フリーライターとして頑張ってほしいと心から思う。

 話をしていてわたしのほうが早く寝ぼけたことを言ったので、村岡氏が「もう寝ようか?」と切り出してくれ就寝。

 朝食はさんまの一夜干しとなめこ入りみそ汁だ。村岡氏も次男も残さず食べてくれた。

 いざ出かけようとすると大雨が降り出す。10時半ごろ雨足が最も激しく、3人とも頭を押さえながら車に飛び乗る。

 途中、稲毛海岸でスパゲッティを食べて京葉道路経由で会社へ向かい、村岡氏を市ヶ谷駅で降ろす。

 印刷会社の営業マンがK誌9月号頭出しを持参。わたしは妻の看病と子育てがあるなか、6本の原稿を書き上げた労作だ。

   上司の加藤佳寿夫専務、岩野清志取締役(ともに当時)の机上へ置いたのち、自席でページをめくる。

 車へ戻ると、次男が寝ているので、そのまま起こさないで車を走らせる。幕張インターから京葉道路へ乗ったところで、三男の病院へ寄ってやればよかったと後悔する。

 貝塚インターで降りて大学病院へ。妻はとても元気だ。

「あす外出許可が出たら三男のところへ行ってやらないか?」

「看護婦さんに尋ねてみる」

 その日は比較的早く引き揚げる。自宅で村岡氏からのお見舞いを開くと大枚2枚が入っていた。

   これからフリーランスとなり、住宅ローンの残もあるのに申し訳ない。そのぶん妻に献身的な看病をしてやろうと誓う。

 長女、長男が義父母宅から父母宅へ移動したらしい。ふたりとも元気とのことだ。

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